【技能検定1級】第9回問01~問05の解き方

第9回キャリアコンサルティング技能検定1級学科試験問題を徹底解説!

選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。

問1.社会・経済的な動向とキャリア形成支援の必要性の認識

 労働政策研究・研修機構(JILPT)の資料シリーズNo.217「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状③-平成29年版『就業構造基本調査』より-」からの出題です。

国家試験、技能検定の両方でこれまでには出題の少ない、就職氷河期世代に関する問題ですから、今後に備え、冒頭のP1~P2の「『就職氷河期世代』についての要約」だけでも読み、本問で要点を掴んでおきましょう。

 若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状③-平成29年度『就業構造基本調査』より-

1.○:初職から正社員である「正社員定着」の割合が低く、「他形態から正社員」が多くなっている。【P2】これは、「就職氷河期」といわれる新卒時の就職環境の悪化の影響を強く受けた影響である。【P27】

2.×:キャリア別の収入の違いは大きく、初職の状況が後から正社員になった場合においても影響を及ぼし続けている。【P2】

3.×:「就職氷河期世代」は正社員への移行のタイミングが遅い。【P1】

4.×:就業希望の有無にかかわらず求職活動をしない理由として最も多いのが「病気・けがのため」である。【P2】

5.×:世帯主である親の年金で「就職氷河期世代」の非求職無業者と親が何とか暮らしている状況が浮かび上がる。【P2】

問2.キャリアコンサルティングの役割の理解

 キャリアコンサルティングの役割に関して、社会正義の視点、アドボカシー(擁護、代弁)からの出題がありました。今後の出題も予想されますので、「アドボカシー」というキーワードをおさえておきましょう。

1.×:アドボカシーとは、「擁護や代弁」のことを意味する。昨今、キャリアコンサルティングにおいて、「社会正義」の視点で、クライエントを擁護、代弁したり、組織や社会への提言を行うアドボカシーの実践が重視されるようになっている。参考資料としては、JILPTの資料が詳しい。【キャリアコンサルティングと社会正義:PDF】なお、アドボカシーについては、ジル資料にも記載がある【P175)】。

2.○:環境への働きかけは、キャリアコンサルタントの役割である。

3.×:出典は不明であるが、キャリアコンサルティングにおいて、個人のみならず、組織や企業内の文化的多様性を考慮する必要がある。

4.×:クライエントの持つ個性、価値観を「認めない」のは、不適切である。

5.×:仕事と家庭のバランスを「均等」にするといいつつ、家族の問題を「優先的」には辻褄が合わないし、ワークライフバランスに大切なのは、仕事と家庭の「調和」である。

問3.キャリアに関連する理論の理解

 クランボルツの理論について、渡辺先生の著書からの出題です。国家試験でも出題がされていない箇所からの出題でやや解きづらい問題でした。今後の出題に備えてよく確認しておきましょう。

1.○:「クライエントは有益な出来事を作り出す方法として、探索的な行動に携わることを学習する」ことを、偶発性学習理論を促進する方法としてあげている。【渡辺先生P147】

キャリアの理論に関する出題は、国家試験と同様に技能検定においても、渡辺三枝子先生の「新版キャリアの心理学」が出典と思われる出題が多いです。木村先生の著書と併せて、机上に用意しておきたい参考書です。表記しているページ数は第2版のページ数となります。

2.×:これらの4つのCは、サビカスが提唱したキャリア・アダプタビリティの4次元である。【渡辺先生P97】

3.×:マッチした職業を見つけることでなく、変化し続ける仕事環境において満足のいく人生をクライエントが作り出していけるように、学習を促進させることが目標であるとしている。【渡辺先生P144】

4.×:職業に対する興味ではなく、新しい学習経験の妨げとなっている信念(belief)を測定するために「Career Beliefs Inventory」を用いる。【渡辺先生P144】

5.×:社会的学習理論では、直接経験による学習に加えて、観察学習を強調している。【渡辺先生P130】

問4.キャリアに関連する理論の理解

 すべて木村先生の著書からの出題です。これまでに出題のあまりない内容もありましたが、消去法でアプローチしましょう。類型や調和といった用語が、ホランドのキーワードとなります。

木村先生の著書「キャリアコンサルティング理論と実際」は、学科試験出典ナンバー1のバイブルですので机上に是非ご用意のうえ、出題箇所を参照しましょう。2022年5月に6訂版が刊行されました。参照ページ数は5訂版を⑤、6訂版を⑥としています。

1.×:「職業選択は、学習の結果である」としているのは、クランボルツらが提唱している、キャリア意思決定における社会的学習理論である。【木村先生⑤P26、⑥P89】

2.×:起こった出来事や体験ではなく、受け止め方により困惑するという考え方は、エリスの論理療法を支える哲学である。【木村先生⑤P47、⑥P118】

3.○:「個人と環境との類型が同一であることによって、調和的相互作用がより安定した職業選択、より高い職業達成などをもたらす。」【木村先生⑤P30、⑥P67】

4.×:「職業選択は、生涯にわたる意思決定のプロセスである」としたのは、ギンズバーグである。【木村先生⑤P34、⑥P70】

5.×:これは、グラッサーによって提唱された現実療法の特徴の一つである。【木村先生⑤P280、⑥記載無し】

問5.キャリアに関連する理論の理解

 ジェラットの意思決定モデルに関する出題です。これまでにあまり出題のない、カオス理論、SCCT、ヒルトンの認知的不協和理論などが問われており、「予測」や「評価」のキーワードから、ジェラットであることを積極的に選択したい問題でした。 

1.×:これはジェラットの理論ではなく、キャリア・カオス理論の視点である。ほかにフェイズ・シフトとアトラクタがある。【ジルP49】

当サイトでは、「職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査」を通称、ジル資料と呼んでいますが、労働政策研究・研修機構で発行している資料で、キャリア理論とカウンセリング理論がわかりやすくまとめられており、おすすめです。PDFファイルは無料でダウンロードでき、移動時間等の学習に役立ちます。

2.×:三者相互作用を理論の基盤としたキャリア選択の理論は、社会認知的キャリア理論(SCCT)である。三者相互作用はバンデューラが唱え、社会認知的キャリア理論(SCCT)はレント、ブラウン、ハケットが開発した。【ジルP34】

3.×:これらは、自己効力感を高める4つの情報源として、バンデューラが唱えた。【ジルP31】

4.○:ジェラットの意思決定システムは、予測システム、価値(評価)システム、基準(決定)システムの三段階からなる。【ジルP29】

5.×:こうした不一致(不協和)の解消が意思決定の過程であるとしたのは、ヒルトンの意思決定モデルである。【ジルP29】

参考文献・資料

若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状③-平成29年度『就業構造基本調査』より-(PDF)

キャリアコンサルティングと社会正義(PDF)

新版 キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ渡辺 三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)

キャリアコンサルティング理論と実際6訂版木村周、下村英雄著(雇用問題調査会2022年)

職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査(労働政策研究・研修機構2016年)

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