【技能検定】第29回問06~問10の解き方

第29回キャリアコンサルティング技能検定学科試験問題を徹底解説!

選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。

問6.キャリアに関する理論

 問5に続いて、キャリア理論に関するキーワードと人名の正誤を問う問題でしたが、間違い探しは、比較的容易な選択肢でした。

1.○:パーソンズの内容として適切である。パーソンズは後に特性因子理論と言われる理論の原型を作った。【木村先生⑤P23、⑥P63】

2.×:クランボルツではなく、ホランドである。ホランド理論の6つのタイプのうち、3つの頭文字を合わせたものを、スリーレターコードという。スリーレターコードは、意外にも、主要参考書には記載がない。

3.×:予測(予期)システム→価値システム→基準(決定)システムによる連続的意思決定システムによる連続的意思決定システムは、ジェラットが提唱した。【渡辺先生P116】

4.×:偶然の出来事を計画された偶発性と捉えたのは、ジェラットではなく、クランボルツである。偶然の出来事を捉える5つのスキルの内容は適切である。①好奇心、②持続性、③柔軟性、④楽観性、⑤冒険心の5つである。【ジルP47】

覚え方:コージくん、柔軟に楽しく冒険♪

なお、偶然の出来事を捉える5つのスキルについては次の資料に明記されている。

当サイトでは通称、ジルや、ジル資料と呼んでいますが、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT:ジルピーティー)で発行している資料で、キャリア理論とカウンセリング理論がわかりやすくまとめられており、おすすめです。なお、PDFファイルは無料でダウンロードでき、移動時間等の学習に役立ちます。

職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査

問7.キャリアに関する理論

 両試験で意外とあまり出題されていない、社会認知的キャリア理論(SCCT)からの出題は、国家試験第14回問38以来です。社会認知的キャリア理論(SCCT)は、バンデューラが提唱した社会的学習理論を、キャリア選択の理論へと発展させた形と捉えておきましょう。

1.×:社会認知的キャリア理論(SCCT)はレント、ブラウン、ハケットにより提唱された。【ジルP34】

ちなみに、デシとライアンは、内発的動機づけの自己決定理論を提唱した。主要参考書にはデシとライアンに関する記述はない。

2.○:社会認知的キャリア理論(SCCT)の内容として適切である。

SCCTモデルでは、人、環境、行動の三者相互作用に、認知にかかわる学習経験(自己効力感と結果期待を含む)と、興味、目標設定、そして行動の結果を加えて、キャリア選択を説明している。【ジルP35】

3.×:三者相互作用の三者とは、人、環境、行動である。【ジルP34】

4.×:個人的要因、背景や環境的要因に加え、学習経験(バンデューラの4つの情報源)を経てキャリア選択が行われるのが、社会認知的キャリア理論(SCCT)の特徴である。

ちなみに、バンデューラの4つの情報源には、①遂行行動の達成、②言語的説得、③代理的経験、④情動的喚起がある。これらは両試験で頻出である。

問8.カウンセリングに関する理論

 行動療法の技法の種類、特徴に関する問題です。技法の名称、特徴(内容)、提唱者について確認しておきましょう。

1.○:モデリングとは観察学習のことであり、直接経験していないことも、観察をすることにより、学習することができることをいう。【渡辺先生P132】

社会的学習理論の大きな特徴の一つであり、モデリングの理論を確立したのは、自己効力感で知られるバンデューラである。

2.×:これはシェイピング法ではなく、系統的脱感作の内容である。

逆制止を反復することにより、恐怖心を引き起こす対象と恐怖反応との結びつきを弱める治療法は、系統的脱感作といい、ウォルピにより開発された。【木村先生⑤P48、⑥P121】

3.×:これは系統的脱感作ではなく、シェイピング法の内容である。

オペラント条件づけに基づき、正しい方法を容易な段階から順に、段階的に達成させて強化し、段階的に目標行動を獲得させる方法を、シェイピング法といい、スキナーにより開発された。【参考サイト:ITカウンセリングlab

4.×:これは漸進的筋弛緩法ではなく、自律訓練法の内容である。

「気持ちが落ち着いている」などの公式を反復して、身体がリラックスしていく自己暗示を行うことで、心身の緊張をほぐしていくリラクゼーション法を自律訓練法といい、ドイツの精神科医シュルツにより開発された。【参考サイト:心理オフィスK

また、漸進性筋弛緩法は、意識的に筋肉に力を入れて、そのあと緩めることを繰り返すことで、リラックスしていく方法であり、ジェイコブソンが開発した。

問9.カウンセリングに関する理論

 1960年代以降、カーカフによって提唱されたカウンセリングモデルである「ヘルピング」に関する問題です。判断の難しい選択肢もありましたが、出典はすべて木村先生の著書です。該当箇所を一読しておきましょう。

1.○:ヘルピングは、精神分析療法や来談者中心カウンセリングのような洞察志向の技法と、行動療法などの行動変容志向の技法とを結合した折衷主義、統合主義的アプローチである。【木村先生⑤P279、⑥P373】

2.○:カウンセリングを専門的カウンセラーの独占物にせず、広く一般の人も使えるように方式化した。【木村先生⑤P279、⑥P373】

3.×:事前段階(かかわり技法)、第1段階(応答技法)、第2段階(意識化技法)、第3段階(手ほどき技法)、そして、援助過程の繰り返しが行われる。【木村先生⑤P279、⑥P373】

4段階に関する記述は適切だが、5つ目には「援助過程の繰り返し」があり、援助は直線的に進行するのではなく、反応や行動の結果をフィードバックしながら以前の段階に繰り返すように進行する。【木村先生⑤P280、⑥P374】

4.○:事前段階(かかわり技法)ではラポールの形成が行われる。具体的には「かかわりの準備」、「親身なかかわり」、「観察」、「傾聴」の4つの技法がある。【木村先生⑤P279、⑥P373】

問10.職業能力開発(リカレント教育を含む)の知識

 選択肢1、4は比較的、正誤判断はしやすかったのではないでしょうか。選択肢2に能力開発基本調査の内容は頻出ですから、しっかりとおさえておきましょう。消去法のアプローチで良いでしょう。また、企業の教育訓練費は、だいぶ低い水準であることをインプットしておきましょう。

1.×:一般的には、リカレント教育は、学校教育からいったん離れたあとの学び直しのことを言い、社会人未経験の大学生の資格取得のための修学は含まれない。【厚生労働省

2.×:自己啓発を行う上での問題点の内訳として、正社員、正社員以外ともに最も多いのは、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」である。「費用がかかりすぎる」は正社員では2位、正社員以外では3位である。【令和3年度能力開発基本調査P58:PDF

令和5年度版においても、正社員、正社員以外ともに最も多いのは、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」であり、「費用がかかりすぎる」は正社員、正社員以外ともに3位である。【令和5年度能力開発基本調査P61:PDF

3.○:「現金給付以外の労働費用」に占める「教育訓練費」の割合は0.9%である。【令和3年就労条件総合調査P13:PDF

就労条件総合調査は過去に1度だけ、1選択肢分の出題にとどまり(国家第6回問23)、出題は稀なものの、労働時間や割増賃金、その他の労働費用に関する全国調査結果であり、分量も15ページほどでもあるため、ご自身の会社などとの比較もしながら目を通しておくのも良いでしょう。

4.×:人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度である。特定訓練コース、一般訓練コースなどがある。【厚生労働省

参考文献・資料

職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査(独立行政法人労働政策研究・研修機構)

新版キャリアの心理学渡辺 三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)

キャリアコンサルティング理論と実際6訂版木村周、下村英雄著(雇用問題調査会2022年)

ITカウンセリングlab

心理オフィスK

厚生労働省

令和3年度能力開発基本調査(PDF)

令和3年就労条件総合調査(PDF)

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