第25回問16~問20の解き方
第25回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!
問16.企業におけるキャリア形成支援の知識
【A】職業能力開発推進者に関する大問は、定期的に出題されています。設置は法的義務ではないものの、人材開発支援助成金の申請において必須要件になっています。
正答:2
1.×:キャリアコンサルタントを職業能力開発推進者として選任することは、事業主の(法的)義務ではない。
なお、厚生労働省の資料では「職業能力開発推進者には、専門的な知識・技術をもつキャリアコンサルタント等から選任しましょう!」と努力義務として位置づけている。【厚生労働省:PDF】
2.○:職業能力開発計画の作成と実施は、職業能力開発推進者の役割として適切である。【厚生労働省:PDF】
3.×:事業内職業能力開発計画の作成は、職業能力開発促進法第11条に基づく、事業主の努力義務である。【厚生労働省】
4.×:教育訓練給付金ではなく、人材開発支援助成金である。
人材開発支援助成金は、「職業能力開発推進者」の選任と「事業内職業能力開発計画」を策定・周知している事業主を対象としている。【人材開発支援助成金のご案内(P4):PDF】
問17.労働市場の知識
【C】選択肢1、2はコロナ禍の影響、3は副業、4は転職入職率と多岐に及ぶ問題で、細かな内容が問われています。4はそう言われるとそうかもしれない、という問題ですが、初見では判断が難しい問題です。
正答:4
1.×:雇用調整助成金の支給対象延べ人数を試算すると、2020年8月をピークに減少しており、支給対象延べ人数が労働力人口に占める割合は、ピーク時には3%台後半程度、2021年以降もおおむね1.0~1.5%程度で推移している。【P140】
2.×:出向元業種として最も多いのは「運輸業・郵便業」である。
業種別にみると、航空運輸業を含む運輸業・郵便業や製造業、宿泊業・飲食サービス業といった業種を中心に、幅広い業種において、同業種・異業種問わず、在籍型出向を実施している。【P142】
3.×:副業・兼業の実施状況を男女別・年齢別に確認すると、男女ともに若年層ほど実施率が高い。【P144】
4.○:2000年以降の転職入職率は、男女ともに29歳以下の若年層が最も高い。【P148】若年層ほど転職入職率が高いのは、次の図を見ると一目瞭然である。
資料出所:令和4年度経済財政報告P148、第2-2-14図転職動向
問18.労働市場の知識
【C】労働経済の分析からの2問目は第1部からの出題でしたが、コラムからの出題で、その内容もかなり難しく、消去法でも食らいついていくのが大変な問題でした。初見では正解できなくてもやむを得ないでしょう。
正答:1
1.×:このミスマッチは、職業紹介を通じた労働力需給の調整や、職業訓練等を通じたスキルの付与等により、労働市場間で労働力の再分配を行うことで緩和できる。
ミスマッチの概念には二種類あるとしており、本選択肢は①のケースである。
①複数の労働市場間で労働者が適切に分配されていない場合。
→(対策)職業紹介を通じた労働力需給の調整や、職業訓練等を通じたスキルの付与等により、労働市場間で労働力の再分配を行うことが支持される。【P58】
②個別の企業と労働者の属性間に相性の不一致が生じている場合。
→(対策)転職などの際の情報の非対称性の緩和(企業情報の開示など)を通じて、外部労働市場を活用しやすくすることで、より自らに合う企業で労働者が能力発揮できるよう支援する。【P59】
2.○:上記の②のケースである。【P59】
3.○:あり得る。失業率(U)と欠員率(V)の組み合わせが、右上にシフト(失業率・欠員率ともに上昇)する時は、構造的・摩擦的失業率の上昇を示している。【P60】
4.○:職種別の労働力需給の動向からは、感染症の感染拡大以前から、事務職では求職者超過、介護・福祉職では求人超過が続いているなど、構造的な労働力需給のミスマッチが起きている兆候がみられる。【P64】
問19.労働市場の知識
【A】労働力調査で用いられる用語の問題は、これまでも度々出題されています。しっかりとマスターしましょう。
拙著にもまとめがあります。
テキスト&問題集第3版(P122)
正答:2
1.×:完全失業者は、次の3つの条件を満たすものである。
①仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない)。
②仕事があればすぐ就くことができる。
③調査週間中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む。)。
2.○:労働力人口比率は、15歳以上の人口に占める「労働力人口」の割合である。
3.×:完全失業率は、「労働力人口」に占める「完全失業者」の割合である。
4.×: 非労働力人口は、15歳以上の人口のうち、「就業者」と「完全失業者」以外の者である。具体的には、専ら通学・家事をしている人や、その他(高齢者など)である。
通学や家事のかたわらにパート、アルバイトなどで仕事をしている人は「従業者」であり、「就業者」であり「労働力人口」に含まれる。
テキスト&問題集第3版(P122)
問20.労働市場の知識
【C】令和5年10月末公表の新しい調査結果からの出題でした。最速といえる出題タイミングです。また、変形労働時間制や勤務間インターバル制度の導入状況については、初めての出題で判断の難しい内容でした。
就労条件総合調査はその目的、内容などについて、選択肢での出題は複数回ありますが、今回のような大問での出題は初めてです。
初見では正解できなくてもやむを得ませんが、今後の出題に備え、それぞれどのくらいなのか、インプットしておきましょう。
正答:3
1.○:週の所定労働時間は、企業平均39時間20分であり、これを産業別にみると、「金融業、保険業」が38時間02分で最も短く、「宿泊業、飲食サービス業」及び「生活関連サービス業、娯楽業」が39 時間35分で最も長くなっている。【P3】
なお、所定労働時間とは、各企業における労働時間のことで、法定労働時間(1日8時間、週40時間)の範囲内で各企業が定める。
2.○:令和4年の1年間に企業が付与した年次有給休暇日数は、労働者1人平均は 17.6 日で、このうち労働者が取得した日数は10.9日。その取得率は62.1%(前年58.3%)となっており、昭和59年以降過去最高となっている。【P6】
3.×:変形労働時間制を採用している企業割合は 59.3%である。【P8】
なお、変形労働時間制の種類(複数回答)別にみると、「1年単位の変形労働時間制」が31.5%、「1か月単位の変形労働時間制」が24.0%、「フレックスタイム制」が6.8%となっている。【P8】
4.○:勤務間インターバル制度の導入状況別の企業割合をみると、まず全体では、「導入している」が6.0%、「導入を予定又は検討している」が11.8%、「導入予定はなく、検討もしていない」が81.5%となっている。【P10】
なお、今回の正誤に影響はないが、従業員1000人以上の企業では、「導入している」が17.6%、「導入を予定又は検討している」が23.2%、「導入予定はなく、検討もしていない」は58.9%である。【P10】
一方、1000人未満の企業での「導入している」は、300~999人で8.3%、100~299人で6.1%、30~99人で5.4%である。【P10】
なお、プラスワンで、みなし労働時間制を採用している企業割合は14.3%となっており、みなし労働時間制の種類(複数回答)別にみると、「事業場外みなし労働時間制」が 12.4%、「専門業務型裁量労働制」が2.1%、「企画業務型裁量労働制」が0.4%となっている。
各制度の導入状況をまとめると、次のようになる。
令和5年就労条件総合調査の概況より
なお、高度プロフェッショナル制度は、令和6年3月末時点で、30事業場(29社、1340人)で導入されており、徐々に増加しているものの、まだ少数での導入に留まっている。【厚生労働省「高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況」:PDF】