【技能検定】第33回問01~問05の解き方
第33回キャリアコンサルティング技能検定学科試験問題を徹底解説!
選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。
目次
問1.社会・経済の動向並びにキャリア形成支援の必要性の認識
【B】2級と国家試験を通じて、就職氷河期世代への支援に関する大問は、(意外にも)初めてのため、詳しく内容を解説します。各選択肢は消去法でアプローチするのがよいでしょう。
正答:1
1.○:これは特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)のことを示している。この助成金についても初出である。
就職氷河期世代の対象となる労働者を正規雇用労働者として新たに雇用した場合に加え、人材育成及び賃金引上げを行った事業主へ助成を行っている。【P10】
【厚生労働省】
就職氷河期世代の受入機会の増加に繋がる助成金として以下のものがある。【P10】
・特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース等)
・トライアル雇用助成金
・キャリアアップ助成金(正社員化コース)
・人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
2.×:ハローワークを中心とした在職時からの継続的な相談支援体制の整備としては、「在職時からキャリアアップに関する継続的な相談支援が行えるよう、必要な体制整備を図る」と表現しており、テクニカルスキルやヒューマンスキルの優先順位づけに関する言及は特にない。【P9】
3.×:集約して絞り込むのではなく、市町村における重層的支援体制の整備を推進する。【P14】
重層的支援体制は次の3つを柱としている。
①介護、障害、子供・子育て、生活困窮分野の各法に基づく相談支援事業
②地域住民が地域社会に参加する機会を確保するための参加支援事業
③地域住民相互の交流を行う拠点の開設等を行う地域づくり事業
なお、都道府県は市町村への後方支援等を行う。
4.×:伴走支援はハローワークや地域若者サポートステーションなどが連携して行うとしており、地域若者サポートステーションによる支援に移行しているわけではない。
伴走支援の枠組みとしては以下のようが具体的記述がある。
①ハローワークに専門窓口を設置、担当者によるチーム支援を実施し、就職から職場定着まで一貫した支援を実施する。【P6】
②地域若者サポートステーションや生活困窮者相談支援機関のアウトリーチ機能を強化し、関係機関の連携を進める。【P22】
アウトリーチは、手を差し伸べることで、援助が必要な人に対して積極的に働きかけることを意味している。
問2.キャリアコンサルティングの役割の理解
【B】頻出の能力開発基本調査は経年比較を問う、変化球のやや難な問題でしたが、重箱の隅をつつく、という問題ではないためCランクには位置づけていませんが、解き方を整理しましょう。
(参考)令和4年度能力開発基本調査令和3年度能力開発基本調査
正答:3
1.×:積極的な解答が困難な選択肢だが、「キャリア形成に関する研修」を実施した割合の経年比較をみると、減少ではなく、増加傾向である。
令和3年度:26.0%【3年度P15】
令和4年度:27.3%【4年度P15】
令和5年度:29.3%【5年度P18】
2.×:頻出の「キャリアコンサルティングを行った効果」の不動の一位は、「労働者の仕事への意欲が高まった」である。これはしっかりインプットしておく。
令和3年度:正社員、正社員以外ともに労働者の仕事への意欲が高まった【3年度P22】
令和4年度:同上【4年度P22】
令和5年度:同上【5年度P27】
なお、「自己啓発する労働者が増えた」は、正社員、正社員以外ともに、各年度で2位である。
3.○:キャリアコンサルタントに相談したい内容(正社員)の1位、2位の内容として適切であり、いずれも40%を超えている。
正社員の1位 | 正社員の2位 | |
令和3年度 | 将来のキャリアプラン(55.7%) | 仕事に対する適性・適職(41.7%) |
令和4年度 | 同上(58.9%) | 同上(42.8%) |
令和5年度 | 同上(56.9%) | 同上(45.3%) |
【令和3年度P62】【令和4年度P60】【令和5年度P66】
「正社員以外」については年度によって1位が入れ替わることがあり、経年比較は問われにくいと思われる。
令和5年度を確認すると「正社員以外」の1位は「仕事に対する適性・適職」、2位は「仕事の内容、賃金、労働時間などの労働条件・労働環境」である。【令和5年度P66】
4.×:この1年間にキャリアコンサルティングを受けたことがあると答えた正社員の割合は13%台で推移しており、若干ではあるものの、徐々に増加している。
令和3年度:13.3%【3年度P59】
令和4年度:13.5%【4年度P57】
令和5年度:13.8%【5年度P63】
問3.キャリアに関する理論
【A】前回の2級第32回問3に続き、多文化キャリアカウンセリング論からの出題でした。人名と要点を確認しましょう。
正答:3
1.×:アフリカなどの国々ではなく、アメリカなどの先進各国において人種構成が多様になり、多文化となったことを背景に、それまでの社会の多数派だけではなく、少数派、マイノリティの文化を持つキャリア発達論が論じられるようになった。【木村先生P93】
キャリアコンサルティング理論と実際6訂版 木村周、下村英雄著
学科試験出典ナンバー1のバイブルですので机上にご用意のうえ、出題箇所を参照しましょう。6訂版のページ数を表示しています。
2.×:多文化キャリアカウンセリング論では、中心的な文化を理解させていくのではなく、それぞれの文化に即したキャリア支援を考える必要性を説いている。【木村先生P93】
3.○:リチャードソンは1993年に、スーパーのキャリア発達理論は、あくまで「白人男性中流階級」を対象としたものだと批判している。【木村先生P93】
4.×:フアドは、アメリカ社会の多文化主義の限界を指摘しているのではなく、キャリア理論やアセスメントが、アメリカ白人の主流の考え方に偏っていると指摘している。
キャリア支援で使用するアセスメントは、暗黙にアメリカ白人の主流文化を前提としており、アメリカのマイノリティはアセスメントの結果、どうしてもキャリア意識が低く判定されやすくなると指摘している。【木村先生P94】
問4.キャリアに関する理論
【A】キャリアに関する諸理論の内容横断的な問題です。それぞれの理論の特徴を思い浮かべながら、もしくはキーワードから理論家を想定しながら、間違い探しをしましょう。
正答:3
1.×:「人々が意味ある偶然の出来事に出会う機会を増やし、 キャリア形成に役立てることを支援する」のはクランボルツの「プランドハプンスタンス(計画された偶発性)理論」である。【木村先生P96】
2.×:意思決定理論における「連鎖的なプロセス」は、ジェラットの連続的意思決定モデルを思わせる表現である。連続的意思決定プロセスは、予期システム→価値システム→基準(決定)システムのプロセスにより意思決定が行われる。【木村先生P86】
また、マキシサイクルとミニサイクルは、スーパーの職業的発達段階を思わせるキーワードである。【木村先生P73】
3.○:サビカスのキャリア構築理論の内容である。
人と環境の適合性は静的でも固定的でも客観的にあるものでもない。むしろ、人々の解釈や理解によるものであり、容易に変化しうる動的なもの、その意味で主観的なものである。【木村先生P83】
4.×:職業選択などのキャリア構築において、社会階層、貧困・格差等の問題に焦点をあてるのは、ブルースティンの社会正義論である。【木村先生P99】
なお、社会的学習理論は職業選択を、直接的な経験や、観察することによって得られた「学習」の結果であると考える。【木村先生P89】
問5.キャリアに関する理論
【A】シャインの理論に関する重要なポイントが問われています。
正答:4
1.×:シャインは人が生きている領域、言い換えると、役割が存在する領域として、①生物学的・社会的、②家族関係、③「仕事・キャリア」の3つのサイクルに分けている。【渡辺先生P153】
新版キャリアの心理学第2版 渡辺三枝子編著
キャリアの理論に関する出題は、本書からの出題が多く、木村先生の著書とともに机上に用意しておきたい参考書です。なお、第2版のページ数を表記しています。
2.×:キャリア・コーン(組織の三次元モデル)は、階層次元を表す「垂直的」、職能ないし技術次元を表す「水平的」、円あるいは核へ向かう「部内者化」の3次元からなる。【渡辺先生P156】
3.×:同一の職業においても、人それぞれでどこに価値をおくかは様々であるため、アンカーと職業を一対一で結びつけることは適切ではない。【渡辺先生P162】
【え?どういうこと?】
例えば、10年前から小さな会社を作って、教材づくりの仕事をしているわけですが…。
そのアンカー(船の錨)には、今までにない新しいものをつくりたいという「起業家的創造性」もあれば、「純粋な挑戦」もあります。
また、難しい試験に挑戦する人の役に立ちたいという「奉仕・社会貢献」もあれば、働き方の視点からは「自律/独立」や「生活様式」もあります。
どのアンカーに、より力点を置くかは、その時々の自らや周囲の環境により変わるものですが、一対一でアンカーと職業を結びつけられるものではありません。
みなさんも、ご自身の職業で想像をしてみましょう。
4.○:8つのキャリア・アンカーとして適切である。【渡辺先生P160】
覚え方:せんぜん じぶんは ほうきをもって ほうしした じんせい
(特定専門分野/機能的コンピテンス 全般管理コンピテンス 自律/独立 保障/安定 起業家的創造性 奉仕/社会献身、純粋な挑戦、生活様式)