第25回問01~問05の解き方

第25回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!

選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。なお、過去の類題の過去問解説のリンク先の内容は、直近3回分以外はみん合☆プラス会員限定公開です。

解説内のページ数の表記(【P××】)は、出典の官公庁資料、出典と思われる専門書などの参照ページ数を表しています。

問1.社会及び経済の動向並びにキャリア形成支援の必要性の理解

【B】初出の資料ではあるものの、今後の企業変革の方向性として適切ではないキーワードや表現も多く、不適切な選択肢を選ぶこと自体は、それほど難しい問題ではありませんので、落ち着いて判断しましょう。

なお、問1の時事問題に気持ちを揺さぶられたくない方は、後ろから解くなど、解く順序を工夫しましょう。

また、問題文冒頭で2種類の資料が提示されるのは、私が記憶している限りでは、初めてです。解説では便宜上①と②と表記して参照ページを紹介します。確かに、どちらの資料からも出題されていました。

 人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0(①)

 持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書(②)

正答:3

1.×:人材を「使用・消費」したら、枯渇してしまう。

「いかにその使用・消費を管理するか」という費用(コスト)として捉えるのではなく、人材を「人的資本(Human Capital)」として捉え、「状況に応じて必要な人的資本を確保する」という考え方へと転換する必要がある。【②P9】

2.×:日本型の雇用慣行を再評価し、経営戦略に反映させることが求められているわけではない。

かつては日本企業のビジネスモデル、経営戦略の方向性と合致し、競争力の源泉として機能してきたが、これまでの雇用慣行や人材戦略が維持された結果、多くの企業では人材戦略と経営戦略が連動できていない状況がある。【②P10】

3.○:いつでも、どこでも、働くことができる環境を整えることは、事業継続の観点からも必要性が高まっている。【①P22】

働き方の変化に、企業も個人も対応していくことが求められる昨今の方向性からも、アプローチできる。

4.×:業種や会社の状況に応じて、自社の競争優位性を強化する観点が異なるため、メンバーシップ型からジョブ型への早期の完全移行が求められるわけではない。

ジョブ型への雇用形態の転換に際しては、どういった時間軸で、具体的にどの様な方向性を目指すのか、業種や会社の状況に応じた各社の経営判断となる。その際、ジョブ型への移行に向けた移行措置としてメンバーシップ型とジョブ型のハイブリッドにしていく方向性も想定される。【②P16】

問2.社会及び経済の動向並びにキャリア形成支援の必要性の理解

【B】時事問題が2問体制でした。「暮らしと意識に関するNHK・JILPT共同調査」の「暮らし向き」に関する出題は、直近の1級第13回問2でも出題されていましたが、それぞれの感覚に照らし、「よりも」に注意して、消去法で検討しましょう。

 暮らしと意識に関するNHK・JILPT共同調査(一次集計)結果の概要

正答:2

1.×:有配偶者は「600万円以上」と「800万円以上」、無配偶者は「400万円以上」と「600万円以上」のカテゴリーに回答が集中し、各々「600万円以上」の割合がもっとも高くなっている。【P3】

2.○:「中流の暮らし」にあてはまる条件について、「世帯主が正社員として働いている」(63.0%)がもっとも多く、次いで「持ち家に住んでいる」(61.2%)である。【P7】

3.×:「今より暮らし向きは良くなる」の回答割合は9.6%、「今の暮らし向きを維持できる」は53.2%、「今より暮らし向きは悪くなる」は37.2%となっている。【P18】

4.×:「どちらかと言うと思わない」の割合(47.7%)がもっとも高く、次いで「どちらかと言うと思う」(31.5%)、「全く思わない」(17.9%)、「強く思う」(3.0%)の順となっている。【P27】

問3.キャリアコンサルティングの役割の理解

【B】令和4年版労働経済の分析第2部からの出題は3回連続で、出題の趣旨もよく似ています。キャリアコンサルティングの効果に関する調査結果のため、今後も引き続き出題可能性があると予測をしています。

 令和4年版労働経済の分析

正答:2

1.×:派遣社員や契約社員等ではキャリアコンサルティング経験がある者の割合は正規雇用労働者とあまり違いはないが、パート労働者については低くなっている。

なお、派遣社員については、2015年の労働者派遣法の改正により、派遣労働者に対して、本人が希望する場合にキャリアコンサルティングの実施が義務付けられたことが影響している可能性がある。【P220】

2.○:キャリアコンサルティングを受けた者の方が、自ら職業生活設計を考えていきたいと考える者の割合が高い傾向がある。【P221】

3.×:キャリアコンサルティングの経験がある者の方が、現在の仕事内容や職業生活全般の満足感が高い傾向にある。【P222】

4.×:キャリアコンサルティングの経験がある者の方が、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者の割合が高い。

また、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者には、キャリアコンサルティングを「企業外」で受けている者の割合が比較的高い傾向にある。【P225】

ヨコ解きリンク

令和4年版労働経済の分析(第2部)からは、次の出題があります。どちらの問題も「キャリアコンサルティングを受けた経験がある者の方が…?」の問いです。

第23回問3第24回問19

問4.キャリアに関する理論

【A】ホランドのRIASECに関する基礎的な内容が問われました。ホランドの大問(選択肢4つ分の問題)は、第21回問7以来の出題です。

正答:2

キャリアの理論に関する出題は、渡辺三枝子先生の「新版キャリアの心理学」が出典と思われる出題が多く、木村先生の著書とともに机上に用意しておきたい参考書です。なお、2018年7月に出版された第2版のページ数を表記しています。

新版キャリアの心理学(第2版)

1.×:ライフ・キャリア・レインボー理論を提唱したのは、スーパーである。【渡辺先生P48】

2.○:現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的の6つのタイプ(RIASEC)である。【渡辺先生P74】

3.×:保守的領域(Conservative)ではなく、慣習的領域(Conventional)である。【渡辺先生P74】

4.×:ホランドの6領域に基づいた代表的なキャリア・アセスメントツールは、VPI職業興味検査である。【渡辺先生P64】

問5.キャリアに関する理論

【B】1級や2級ではすでに出題されている、多文化・社会正義論に関する出題です。定番の木村先生/下村先生の著書に詳しい記載があります(6訂版のみ)。

多文化・社会正義論は、今後のキャリアコンサルタントが担う役割の一つになっていく可能性もあり、今後は試験の定番になると捉えています。

今回は仲間外れのものが比較的見極めやすく、不適切な選択肢の判断が行いやすいものでしたが、今後は難易度が上がると予測しています。

キャリアコンサルティング理論と実際

木村先生の著書「キャリアコンサルティング理論と実際」は、学科試験出典ナンバー1のバイブルですので机上にぜひご用意のうえ、出題箇所を参照しましょう。参照ページ数は6訂版のページ数です。

正答:1

1.○:ブルースティンは、キャリア支援で最も重要な要因は「社会階層」であるとし、労働者階級や貧困層では特に問題になり、社会階層は「最もパーニシャス(pernicious:致命的、有害)」な影響を与えるとした。【木村先生P99】

第22回総仕上げ模試問7がズバリ的中だったのですが、22回までやっている方は少ないですよね…。

2.×:キャリア支援で使用されるアセスメントは、暗黙にアメリカ白人の主流文化を前提としていると批判し、異文化キャリアアセスメント論を主張したのは、フアドである。【木村先生P94】

3.×:社会正義に関するキャリアガイダンス論の枠組みとして、「キャリアガイダンスの4つのイデオロギー」を提唱したのは、ワッツである。

キャリアガイダンスのイデオロギーを「社会に焦点がある-個人に焦点がある」×
「変革を目指す-現状維持を目指す」の軸で次の4つに分けている。

  社会に焦点 個人に焦点
変革 ラディカル(社会変革) プログレッシブ(個人的変化)
現状維持 コンサバティブ(社会統制) リベラル(非指示的)

(資料出所)Watts,A.G.1996 Socio― political ideO10gies in guidance ln A.G.Watts,B.Law,JKilleen,J.M.Kidd,&R.IIa、Hawthorn (Eds.).Rethinking Careers Education and Cuidance:Theory,Policy and Practice.London,UK:Routledge (pp.352-355)

なお、ワッツはラディカル(社会変革)を重視している。

4.×:文化やアイデンティティに配慮した4つの領域からなる「文化を取り入れたキャリアカウンセリングモデル(Culture-InfusedCareerCounseling:CICC)」を提唱したのは、ナンシー・アーサーである。【木村先生P95】

4つの領域には、次のものがある。

①自分の文化的アイデンティティを知る。
②他者の文化的アイデンティティを知る。
③作業同盟(カウンセリング関係の構築)に対する文化的な影響を理解する。
④文化的に対応した社会的に公平なキャリア支援を行う。

ヨコ解きリンク

多文化・社会正義論に関しては、次の出題があります。

2級第31回問3 1級第11回問2

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