第28回問01~問05の解き方
第28回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!
選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。なお、過去の類題の過去問解説のリンク先の内容は、直近3回分以外はみん合☆プラス会員限定公開です。
解説内のページ数の表記(【P××】)は、出典の官公庁資料、出典と思われる専門書などの参照ページ数を表しています。また、A(易しい)、B(差がつく)、C(難しい)の難易度評価を記載しています。
目次
問1.社会及び経済の動向並びにキャリア形成支援の必要性の理解
【A】性別役割分担など、いわゆる昭和的な考え方と令和的な考え方との対比により、正誤判断は容易な問題でした。初見の資料であっても怯まずに検討しましょう。
正答:2
1.×:固定的性別役割分担を前提とした長時間労働等の慣行があったのは、「昭和モデル」である。【P3】
2.○:育児休業取得は、男性の家事・育児への参画を促進する効果が期待されると同時に、実際に取得した男性からは、「仕事から離れることで価値観が広がる」といった、プラスの効果も聞かれる。【P109】
3.×:「令和モデル」の早期実現に向けて、特に優先すべきこととして、男女ともに自分の希望が満たされ、能力を最大限に発揮して仕事ができる環境の整備がある。【P6】
4.×:「年収の壁」に代表されるような、女性の就労の壁となっている制度・慣行についても、見直しを進めていくことが必要である。【P109】
問2.社会及び経済の動向並びにキャリア形成支援の必要性の理解
【C】雇用動向調査からの出題は、第13回問24以来でした。内容も「一般労働者」と「パートタイム労働者」を分けて問う形式で難しく、正解できなくてもやむを得ない問題に位置づけています。
正答:2
1.×:一般労働者の入職率※は「サービス業(他に分類されないもの)」19.9%、「宿泊業、飲食サービス業」19.8%の順に高い。【P11】
※入職率:常用労働者数に対する入職者数の割合
2.○:一般労働者の離職率※は「生活関連サービス業、娯楽業」20.8%、「サービス業(他に分類されないもの)」19.3%の順に高くなっている。【P11】
※離職率:常用労働者数に対する離職者数の割合
3.×:パートタイム労働者の入職率は「生活関連サービス業、娯楽業」49.2%、「宿泊業、飲食サービス業」40.5%の順に高い。【P11】
4.×:パートタイム労働者の離職率は「生活関連サービス業、娯楽業」36.9%、「サービス業(他に分類されないもの)」32.7%の順に高い。
「生活関連サービス業、娯楽業」は一般労働者、パートタイム労働者ともに、離職率が最も高い。
「生活関連サービス業、娯楽業」には、クリーニング業、理容業、美容業、公衆浴場業、旅行業、葬儀業、結婚式場業、映画館、ゴルフ場、フィットネスクラブ、パチンコホールやゲームセンターなどがある。【日本標準職業分類:PDF】
問3.キャリアコンサルティングの役割の理解
【A】出題範囲「キャリアコンサルティングの役割の理解」から出題は、前回と同様、能力開発基本調査でした。また、問14でも本調査からの出題があります。
なお、本問は、「4人に1人」などの表現も含め、第24回問2に非常によく似た内容でした。
正答:3
1.×:正社員では約7.2人に1人の割合(13.8%)である。
令和4年度中にキャリアコンサルティングを受けた者は、「労働者全体」では10.8%であり、「正社員」では13.8%、「正社員以外」では5.4%であった。【P63】
2.×:「よりも」に注意する。
正しくは、「企業外の機関等(再就職支援会社やキャリアコンサルティングサービス機関等)」よりも、「企業内の職場の上司・管理者」が圧倒的に多い。【P63】
令和5年度能力開発基本調査(厚生労働省)より転載
3.○:キャリアに関する相談が役立ったことでは、「仕事に対する意識が高まった」が例年、不動の一位である。【P63】
4.×:キャリアコンサルタントに相談したい内容は、正社員では、「将来のキャリアプラン」( 56.9%)が最も多く、次いで、「仕事に対する適性・適職( 職業の向き不向き)」( 45.3%)である。【P66】
なお、正社員以外では、「仕事に対する適性・適職( 職業の向き不向き)」(38.1%) が最も多い。【P66】
問4.キャリアに関する理論
【B】前回に続き、問4では「サビカス」が出題されました。
選択肢2や3は難しい表現でしたが、サビカスが主張する「語り(ナラティブ)」によるキャリア構築理論は、「静的・客観的」なものではなく、「動的・主観的」である点から判断しましょう。
正答:3
1.○:頻出のキャリアアダプタビリティの4次元、試験当日の注意点の動画でも「また出たか」のトピックでお伝えしていました。
ただし、「かとうこうじ」で覚えていた方は、一瞬びっくりしたかもしれませんが、統制=Controlです。木村先生の著書の表現からの出題でした。
木村先生の著書「キャリアコンサルティング理論と実際」は、学科試験出典ナンバー1のバイブルですので机上にぜひご用意のうえ、出題箇所を参照しましょう。参照ページ数は6訂版のページ数です。
2.○:人と環境の適合性は、人々の解釈や理解によるものであり、容易に変化しうる動的なもの、その意味で主観的なものである。【木村先生P83】
3.×:クライエントはすでに存在する自己を表現するために言葉を選ぶのではなく、むしろ、クライエントは言葉を選んで自己を構成し、自己概念を形成する、としている。【木村先生P83】
さらに、人は自己を語るときに自己を構成する、と表現している。【木村先生P83】
4.○:キャリア構築インタビューの特徴的な5つの質問の一つである。【木村先生P84】
他には、少年少女時代に憧れていた人、読んでいる雑誌や見ているテレビ番組、本や映画で好きなストーリー、好きな名言や格言を挙げている。【木村先生P84】
問5.キャリアに関する理論
【B】理論が提唱された背景などを問う、珍しい出題内容でした。理論の誕生には理由や背景があります。特に2から4の内容は、理論との関連性を確認しておきましょう。
なお、パーソンズに関する出題が最近目立っており、大問では第24回問5、第26回問4で出題があります。
正答:2
1.×:これはジル資料の中で、ライフ・キャリア・レインボーの説明において言及している内容である。
理論が誕生した背景というわけではないが、以前の安定的な経済環境と終身雇用制度から、大きく状況が変化している日本の状況に鑑みながら、ライフ・キャリア・レインボーの理論を紹介している。【ジルP21】
職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査
当サイトでは通称、ジルや、ジル資料と呼んでいますが、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT:ジルピーティー)で発行している資料で、キャリア理論とカウンセリング理論がわかりやすくまとめられており、おすすめです。なお、PDFファイルは無料でダウンロードでき、移動時間等の学習に役立ちます。
2.○:パーソンズの職業選択理論が誕生した背景として適切である。
ジル資料で紹介されている、当時の状況は以下の内容である。
キャリアに関する研究は1900 年代初頭にアメリカ人、パーソンズによって始められた。当時のアメリカは産業革命によって社会環境が激変し、急激な経済成長と都市部への人口集中が進む中で、劣悪な労働環境が離職率を押し上げており、中途退職者の急増に起因する失業問題が社会不安を引き起こしていた。【ジルP13】
なお、「職業指導カウンセラー(Vocational Counselor)」という言葉は、パーソンズが、著書「職業の選択」の中で初めて使用した。
3.×:これはクランボルツのプランド・ハップンスタンス理論が誕生した背景として紹介されている。【ジルP46】
4.×:これは、ブルースティンや、フアドやビングハム(ビンガム)ら、社会階層や文化などに配慮したキャリアカウンセリングの背景である。【ジルP67】