第28回問06~問10の解き方
第28回キャリアコンサルタント試験学科試験問題を徹底解説!
目次
問6.キャリアに関する理論
【A】前回の第27回問9に続き、ホールの出題です。2回連続してホールの大問が出題されるのは珍しいケースです。
プロティアン(変幻自在)であるのは、人なのか、組織なのかを考えると、自ずと解答できます。前回もテーマとなった、伝統的なキャリアとプロティアン・キャリアの対比を確認しておきましょう。
テキスト&問題集(第3版)P38より転載
正答:1
1.○:プロティアンとはギリシャ神話のプロテウスから名付けられており、「変幻自在である」ことを意味する。プロティアン・キャリアは、組織によってではなく個人によって形成されるものである。【渡辺先生P171】
2.×:キャリアを営むその人の欲求に見合うよう、そのつど方向転換し、移り変わる環境に対して、自己志向的に変幻自在に対応していくキャリアである。【渡辺先生P171】
3.×:従来の伝統的なキャリアとの対比は、これまでにもよく出題されている。
伝統的なキャリアは、組織における気づき「私は何をすべきか」を重視するが、プロティアン・キャリアでは、自己への気づき「自分は何がしたいのか」を重視する。【渡辺先生P173】
4.×:プロティアン・キャリアを形成していくに当たって、必要な2つのメタ・コンピテンシーは、アイデンティティとアダプタビリティである。【渡辺先生P172】
難しい用語が多いため、用語の意味を整理する。
メタ・コンピテンシー:新たな能力やスキルを自ら学習していく能力や行動特性。
アイデンティティ:自らの価値観や興味に気づいていることと、過去、現在、未来の自分が連続しているという確信。
アダプタビリティ:環境の変化に適応する能力である「適応コンピテンス」と、それを発達、応用しようとする意思である「適応モチベーション」の積(掛け算)。
問7.キャリアに関する理論
【A】ホランドのRIASECに関する基本的な内容が出題されました。
正答:2
1.×:個人と環境の類型(RIASEC)は8類型ではなく、6類型である。
個人と環境を同一の6類型にまとめ、個人と環境との類型が同一であることによって、調和的相互作用がより安定した職業選択、より高い職業達成などをもたらすとした。【木村先生P67】
2.○:「現実的職業領域(Realistic)」の内容として適切である。具体例として技術者、機械オペレーターなどがある。【木村先生P68】
3.×:人と接したり、人に奉仕したりする仕事や活動の領域を指すのは、「社会的職業領域(Social)」である。【木村先生P68】
なお、「企業的職業領域(Enterprising)」は、企画・立案したり、組織の運営や経営等の仕事や活動の領域である。【木村先生P68】
4.×:対角線上にある領域は正反対の興味を示し、隣にある領域は類似の興味を示す。【木村先生P68】
問8.キャリアに関する理論
【A】選択肢3と4の発達課題に関する出題は、これまでにはあまりないものの、それぞれの段階にその発達課題が、相応しいかどうかを検討しましょう。
正答:2
1.×:「マキシ」は長いという意味であり、「ミニ」の反対語である。
人生全体の発達段階をマキシサイクルとしたとき、各年代のそれぞれに「成長」「探求」「確立」「維持」「離脱」のミニサイクルがある。【木村先生P73】
2.○:役割の種類については、文献によって違いがあるが、木村先生の著書では以下の9種類の内容が紹介されている。【木村先生P72】
子供、学生、余暇人、市民、労働者、配偶者、家庭人、親、年金生活者
なお、渡辺先生の著書では、子ども、学習する者、余暇人、市民、労働者、家庭人の6種類が紹介されている。また、これらの社会的な役割は、「ライフ・スペース」や「ライフ・ロール」とも呼ばれる。【渡辺先生P48】
3.×:これは、各年代別のミニサイクルにおける発達課題として、木村先生の著書に記載されている。
現実的な自己概念を持つことは、青年期(14~25歳)の発達課題である。【木村先生P74】
4.×:他者との関わり方を学ぶことは、成人前期(25~45歳)の発達課題である。【木村先生P74】
問9.キャリアに関する理論
【A】動機づけ理論は第28回対策総仕上げ模試で予想しており、デシ(→マズロー)のみ外れましたが、概ね的中しました。なお、本問は第15回問8と非常によく似ていました。
正答:3
1.×:4つではなく、「自己実現の欲求」を加えた5つである。
マズローの欲求階層モデルは、下位から①生理的欲求、②安全の欲求、③所属と愛情の欲求、④自尊と承認の欲求、⑤自己実現の欲求の5層から構成され、上位の欲求は下位の欲求が充足されて初めて発生すると考えた。【岡田先生P23】
覚え方:生まれ安い所に辞書が実る
岡田昌毅先生の「働くひとの心理学」は、木村先生や渡辺先生の著書には記述がほとんどない、発達理論に関する記述が充実した参考書です。養成講座のテキストにそれらの記述のある方はマストとまでは言えませんが、キャリア理論全般についても、体系的にまとめられている良書です。
2.×:「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」3つの欲求の分類は適切だが、マクレランドは、強すぎる達成動機は自己実現を阻害するとしている。【岡田先生P27】
3.○:アルダファは、マズローの欲求段階モデルを修正し、ERGモデルを提唱した。
Eは存在欲求(Existence)、Rは関係欲求(Relatedness)、Gは成長欲求(Growth)の3つの次元である。
覚え方:存在欲求が「在る」ダファ
なお、ERG理論においては、各欲求は連続的であり、高次・低次の欲求が同時に生じることがあるという点でマズローの理論とは異なる。【岡田先生P26】
4.×:ハーズバーグは、衛生要因ではなく、動機づけ要因の充足が、長期間の満足と動機づけ(仕事への積極性)をもたらすとした。【岡田先生P26】
問10.中高年齢期を展望するライフステージ及び発達課題の知識キャリアに関する理論
【B】マーシャのアイデンティティ・ステイタスに関する大問での出題は4回目。これまでに出題されていなかった「アイデンティティ拡散」が出題されました。これで4つのステイタスが揃ったと言えます。【過去の出題:第18回問6、第20回問29、第25回問31】
正答:4
1.×:これは「アイデンティティ達成」の状態である。【岡田先生P84】
2.×:これは「予定アイデンティティ」の状態である。【岡田先生P84】
3.×:これは「モラトリアム」の状態である。【岡田先生P84】
4.○:「アイデンティティ拡散」の状態の内容として適切である。【岡田先生P84】
「アイデンティティ拡散」は、自らのアイデンティティや、方向性について考えようとしていない状態や、あれもこれもと考えてしまい、絞り込もうとしていない状態をいう。