【技能検定1級】第12回問21~問25の解き方
第12回キャリアコンサルティング技能検定1級学科試験問題を徹底解説!
選択肢の正誤と解説、参考文献をお伝えします。試験対策にお役立てください。
目次
問21.メンタルヘルスの知識
【B】正答選択肢以外は、次の「精神障害の労災認定」に根拠を見いだせます。労災認定のための3つの要件を満たしていれば、派遣労働者も労災認定されることは押さえておきましょう。
正答:4
1.×:認定基準の対象となる精神障害は、気分障害だけではなく、統合失調症や神経症性障害、ストレス関連障害なども含まれる。【P2】
2.×:労災認定要件を満たす場合には、精神障害の既往歴があったとしても対象になりうる。【P2】
労災認定のための3つの要件
①認定基準の対象となる精神障害を発病していること
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
3.×:精神障害の悪化の場合には、精神障害の労災認定基準別表1に記載されている「特別な出来事」があり、その後おおむね6か月以内に精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合に限り、原則として悪化した部分は労災補償の対象となる。【P11】
4.○:派遣労働者の精神障害の発症が、派遣先で仕事をすることが原因だったと認められた場合は、労災認定を受けることができる。
5.×:業務による心理的負荷によって精神障害を発病した人が自殺を図った場合には、原則としてその死亡は労災認定される。【P11】
問22.メンタルヘルスの知識
【C】パニック症(パニック発作)に関する問題で、細かな内容も問われている難問でした。再出題に備えて特徴を整理しておきましょう。
正答:2
1.×:抗うつ薬や抗不安薬などが効果的であるほか、薬物治療と同時に認知行動療法を用いるとさらに効果が高いことも認められている。【e-ヘルスネット】
2.○:なんの前触れもなく、めまい、動悸、呼吸困難、ふるえなどの自律神経症状に加え、激しい不安に襲われる「パニック発作」を繰り返し起こす。【e-ヘルスネット】
3.×:全般性不安症は、慢性に持続する過度の不安によって、数ヶ月以上にわたって心身の緊張症状が現れる状態を言い、パニック障害と同じ、「不安障害」の中に分類されるが、パニック障害との大きな違いは、パニック障害でみられるような、強い自律神経症状がみられないことである。【一般社団法人日本うつ病センター】
4.×:症状は通常10分以内に最高潮に達し、数分で消失する。【MSDマニュアル家庭版】
5.×:疲労や睡眠不足は「パニック発作」を起こしやすくするため、十分休養を取ること、そして、アルコールやカフェインを含むコーヒーなどの嗜好品の飲み過ぎは症状を悪化させるため、注意することが重要である。【公益社団法人日本精神神経学会】
問23.メンタルヘルスの知識
【A】他の選択肢は難しいものがありましたが、正答選択肢(のみ)は、解答が容易な問題でした。「4つのケア」の種類は、国家試験、2級においても頻出です。
正答:3
1.○:「過労死等の労災補償状況」における、2019年度(令和元年度)の支給決定件数は、業種別では「製造業」が最も多かったが、2020年度(令和2年度)、2021年度(令和3年度)では、「医療、福祉」が最も多い。【令和元年度】【令和2年度】【令和3年度】
2.○:第13次労働災害防止計画(2018年度~2022年度)の目標として適切である。
メンタルヘルス対策関連での目標は次のとおりである。
・仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を90%以上。
・メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上。
・ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上。
【第13次労働災害防止計画パンフレットP3:PDF】
なお、第14次労働災害防止計画(2023年度~2027年度)における、「労働者の健康確保対策の推進」に関する目標を紹介する。
・年次有給休暇の取得率を 2025 年までに 70%以上とする。
・勤務間インターバル制度の導入企業の割合を2025 年までに15%以上とする。
・メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を2027年までに80%以上とする。
・使用する労働者数 50 人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を2027年までに 50%以上とする。
・各事業場において必要な産業保健サービスを提供している事業場の割合を2027年までに80%以上とする。
【第14次労働災害防止計画P6:PDF】
3.×:4つのケアには、①セルフケア、②ラインによるケア、③事業場内産業保健スタッフ等によるケア、④事業場外資源によるケアがある。【労働者の心の健康の保持増進のための指針:PDF】
4.○:現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は53.3%(令和2年調査54.2%)となっている。【令和3年労働安全衛生調査(実態調査)の概況P13:PDF】
5.○:職場におけるパワーハラスメントの3つの要素として適切である。
職場におけるパワーハラスメントの3つの要素
①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
②業務の適正な範囲を超えて行われること
③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
【厚生労働省:PDF】
問24.中高年期を展望するライフステージ及び発達課題の知識
【B】判断の難しい選択肢もありましたが、レビンソンの「人生半ばの過渡期」の内容は、しっかりと確認しておきましょう。
正答:3
1.×:ハヴィガーストは、人の成長の段階において果たさなければならない課題を発達課題として、最初に発達段階と課題を提唱している。その段階は、身体的な成熟、社会文化的な規定、価値観や選択などに基づいているが、経済的期待に基づいていると定義づけることは難しい。
2.×:「自己同一性」は、「自我同一性」と同様であると捉えてよく、エリクソンの青年期における発達課題である。【Wikipedia】
3.○:レビンソンは成人前期から中年期への移行期を「人生半ばの過渡期」と呼び、①若さと老い、②破壊と創造、③男らしさと女らしさ、④愛着と分離の4つの両極性の解決が個性化の主要課題であるとした。【岡田先生P78】
4.×:「キャリア中期の危機」から「(非指導役にある、もしくは指導役にある)キャリア後期」、「衰え及び離脱」の段階を経て、「引退」へ至る。【木村先生⑤P64、⑥P231】
5.×:これは維持段階ではなく、「確立段階」の発達課題である。【渡辺先生P46】
問25.中高年期を展望するライフステージ及び発達課題の知識
【C】今回の最難問に位置づけていますが、「老年的超越」は高齢化社会、人生100年時代の中で、参考になる捉え方です。また、古代インドに発達段階のような人生の捉え方があったことにも驚きです。
正答:5
1.×:林住期(りんじゅうき)は、古代インド、ヒンドゥー教の教えの、4つの人生区分(四住期)の一つである。
参考資料によると、四住期は、学生期(がくしょうき)、家住期(かじゅうき)、林住期(りんじゅうき)、遊行期(ゆぎょうき)の4つの区分からなり、林住期は、「仕事や家族を捨てて、別のところで人間性、精神性向上のために努力する」時期とされている。
仕事や家族を捨てて、は言い過ぎかもしれないが、例えば定年退職後に、大学に入り直し、学び直しをしたり、新たな趣味や仕事を探索したりするようなことと捉えている。
次の資料にわかりやすく書かれているので、興味がありましたらどうぞ。
【四住期とブッタの言葉(山本和彦著)※クリックするとPDFが自動的にダウンロードされますのでご注意ください:PDF】
なお、ニューガーデンは、中年期から老年期にかけてのパーソナリティを統合型、防衛型、依存型、非統合型の4つに分類している。
2.×:「行動の模範となる倫理体系の形成」は、ハヴィガーストの「青年期」の発達課題である。
3.×:エリクソンの発達段階における老年期の課題は、「統合性」である。統合とは、自分自身の人生に必然性を持ち、自分の人生は自分の責任であるという事実を受け容れることである。【岡田先生P82】
4.×:「老年的超越」の段階を設定し、物理的合理的世界観への執着から宇宙的で超越的なものへの移行が重要だと考えたのは、選択肢5で登場する、スウェーデンの社会学者トーンスタムである。【老年的超越(増井幸恵著)P210:PDF】
5.○:「老年的超越」の概念を提唱したのは、社会学者トーンスタムである。
「老年的超越」を端的にいうと、老年になり、起床、食事、排便、話す、歩く、寝るなどの日常の行為をするにも「ありがたい」という感覚が生じることであるという。【参考サイト:医療法人和楽会】
本選択肢の「回想の再組織化」のキーワードでは参考資料(直接の出典)は見つからなかったが、参考資料によると、「老年的超越」は宇宙的意識、自己意識、社会との関係という3つの領域に分類される。
宇宙的意識の内容と、選択肢の内容は通じるところがあり、不適切と判断できないだろう。
領域 | 特徴 |
宇宙的意識 | 自己の存在や命が過去から未来の大きな流れの一部であることを認識し、過去や未来の世代とのつながりを強く感じるようになる。 |
自己意識 | 自分の欲求を成し遂げて行くという自己中心的傾向が弱まる。他者を重んじる利他性が高まる。 |
社会との関係 | 過去に持っていた社会的な役割や地位に対するこだわりがなくなる。経済面、道徳面での社会一般的な価値観を重視しなくなる。 |
【老年的超越(増井幸恵著)P210:PDF】
参考文献・資料
過労死等の労災補償状況(厚生労働省)
精神障害の労災認定(PDF)
e-ヘルスネット
精神障害に関する事案の労災補償状況(厚生労働省)
第13次労働災害防止計画パンフレット(PDF)
第14次労働災害防止計画(PDF)
労働者の心の健康の保持増進のための指針(PDF)
厚生労働省
Wikipedia
働くひとの心理学岡田昌毅著(ナカニシヤ出版2013年)
キャリアコンサルティング理論と実際6訂版木村周、下村英雄著(雇用問題調査会2022年)
新版 キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ渡辺三枝子著(ナカニシヤ出版2018年)