令和6年版労働経済の分析第1部ダイジェスト
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(第Ⅱ部編は後日公開します)
労働経済の分析は、通常は厚生労働省が毎年、作成公表しており(令和2年版は、コロナ禍の影響で作成せず3年版に統合)、キャリアコンサルタント試験では、ほぼ毎回出題されているといってもよい、頻出資料で、最も多く出題されています。
また、同じ回で2問~3問出題されることもあります。
資料対策のポイント
ただし、「労働経済の分析」のボリュームは膨大で、精読は困難です。
精読せずに、通読、斜め読み、流し読みで良いですが、その場合には本文前に記載されている、「見出し」に注目し、その内容で違和感のあるもの、気になった内容を、じっくり読む方法がおすすめです。
現物はなるべく読みたくない、という方は…、このダイジェストも見出しの内容を中心にまとめていますので、ダイジェストを一読して「え、そうなの?」と思ったことを中心に確認するのもよいでしょう。
また、これまでと比べて「増加、減少、上昇、下降」などのトレンド(趨勢)が特に出題されます。
一方、細かい数字は滅多にあまり出題されませんので、暗記しようとは思わないでください。半数を超えているとか、○割程度、と大掴みで捉えましょう。
出題傾向と対策
これまでの労働経済の分析に関する出題傾向をみると、完全失業率や有効求人倍率などの雇用指標などのデータがまとめられている「第Ⅰ部」からは、雇用指標や雇用の趨勢に関する出題が1問され、特定のテーマを元にまとめられている「第Ⅱ部」から、1問出題されるケースがこれまでに何度かあります。
なお、第Ⅱ部のテーマは毎年異なるため、年版を遡って出題されることもありえます。
また、第Ⅰ部にまとめられている雇用指標や趨勢(トレンド)は、その他の時事問題や、労働市場に関する知識への対策として、非常に有効です。
出題可能性の高い時期の(比較的新しい)雇用指標を確認するのに適した資料です。
何年版が出るのか?
こればかりは神のみぞ知るところにて、過年度に遡って出題されたこともあれば、直近の年度に公開された最新版が出題されたこともあります。
これまでの実績を整理していると、令和6年版と同じく9月末に公開された労働経済白書が、翌年3月の試験に出題されたことがあります。
このケースは過去に一度だけなのですが、実績としては「ある」ので、念の為、その試験に間に合うように、本教材を用意しました。
また、令和6年版に収載されているデータ等は「2023年12月」までのデータであるため(資料P2に記載)、本資料が直接の出典ではない場合にも、本資料に記載の内容が出題される可能性があります。
それでは、第Ⅰ部のポイントを確認します。
参照ページを付していますので、ご自身が意外に思った、違和感のあった内容については、資料の記述を確認することをおすすめします。
第Ⅰ部:労働経済の推移と特徴
【まとめ】
2023年の雇用情勢は経済社会活動が正常化に向かう中で、求人が底堅く推移し、改善の動きがみられた。
労働時間は、働き方改革により短くなる傾向にある中、総じて前年から横ばいとなり、一般労働者では微増、パートタイム労働者では微減であった。
賃金については、現金給与総額は所定内給与、特別給与の増加により、3年連続で増加している一方、実質賃金は、物価高により2年連続で減少した。(P5)
第1章 一般経済の動向
・2023年のGDPは、年前半は外需や個人消費等の好調さがみられたことから高成長となったものの、年後半は個人消費に弱さがみられ、年間を通して、緩やかに回復している。(P7)
・企業の業況は、製造業・非製造業ともに好調な状況がうかがえた。(P8)
・2023年の倒産件数は、2年連続で前年を上回り、4年ぶりに8,000件台となった。「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」の返済が2023年7月から本格化したことで、資金繰りの厳しさや、原材料価格の高騰等が追い打ちをかけたことなどが要因である。(P13)
・人手不足関連倒産の件数は調査開始以降、過去最高を記録し、要因別では「人件費高騰」による倒産件数が前年比8倍超の大幅な増加となった。(P13)
・消費者物価指数(総合)は、2021年9月に前年同月比プラスとなって以降、2023年1月まで上昇率は拡大していき、2月以降は2~3%台で推移している。(P14)
第2章 雇用・失業情勢の動向
【まとめ】
2023年の雇用情勢は、経済社会活動が活発化する中で、求人が底堅く推移し、改善の動きがみられた。
求人の回復基調には落ち着きがみられるものの、女性や高齢者を中心に労働参加が進展していることに加え、より良い条件を求める転職も活発になっている。
ただし、少子高齢化に起因する我が国の労働力供給制約や経済社会活動の回復等に伴う人手不足の問題が顕在化している。
雇用情勢は、2021年以降、感染拡大前と比べて求人数の回復に遅れがみられる産業もあるものの、経済社会活動が徐々に活発化するなかで持ち直している。(P14)
第1節 雇用・失業の動向
・2020年4月に感染症の拡大による影響により、雇用情勢は一時的に悪化したものの、その後は経済社会活動が徐々に活発化する中で、持ち直している。(P19)
・2023年の我が国の労働力をみると、就業者は約6,740万人であり、就業率は約6割である。(P20)
・就業者のうち雇用者は6,070万人であり、そのうち正規雇用労働者が約6割、非正規雇用労働者が約3割である(残りの約1割は役員)。(P20)
・男女別の就業率は、男性は約7割、女性は約5割である。(P20)
・非労働力人口は、男性よりも女性の方が、1,050万人ほど多い状況である。(P20)
・女性の非労働力人口の中には、働く希望はあるが求職活動はしていない就業希望者が約160万人(完全失業者の2.2倍)いる。(P20)
【用語の確認】
(テキスト&問題集第3版P122)
第2節 就業者・雇用者の動向
・2023年は、2021年以降に引き続き、就業者数及び雇用者数は増加傾向であり、完全失業者数、非労働力人口、休業者数は減少傾向にある。(P22)
・自営業者・家族従業者数は、1980年代以降減少している。(P22)
・男女別・年齢階級別の労働力率の推移をみると、女性は全ての年齢階級、男女計では55歳以上の高年齢層で上昇傾向となっている。(P23)
・正規雇用労働者は女性を中心に9年連続で増加している。(P24)
・非正規雇用労働者数は、景気変動の影響を受けやすく、2020年には感染症の拡大による景気後退の影響から減少がみられたが、女性や高年齢層を中心に労働参加が進む中で、長期的には増加傾向である。(P24)
・正規雇用労働者の割合は、男性では定年年齢の引上げなどに伴い「60~64歳」で顕著に上昇しており、非正規雇用労働者を逆転している。(P25)
・正規雇用労働者の割合は、女性では育児休業制度など企業の両立支援制度の充実に伴う雇用の継続が進んだことなどにより、「25~34歳」「35~44歳」で顕著に上昇している。(P25)
・非正規雇用労働者の割合は、高年齢層を中心に上昇傾向であるが、それ以外の年齢階級では横ばいである。(P25)
・産業別の雇用者数は、「製造業」では増加に転じたほか、「宿泊業、飲食サービス業」では増加幅が拡大している。(P26)
・「非正規雇用から正規雇用へ転換した者」と「正規雇用から非正規雇用へ転換した者」の差は、2022年は年平均ではマイナスとなったが、2023年の年平均はプラス5万人となり、改善の動きがみられた。(P27)
・不本意非正規雇用労働者割合は引き続き低下傾向となっている。(P28)
・個人や家庭の都合により非正規雇用を選択する労働者が増加傾向である。(P28)
・2023年の雇用義務のある民間企業の雇用障害者数は、前年比4.6%増の64.2万人と、20年連続で過去最高となった。
・障害者の実雇用率は、2.33%と12年連続で過去最高となり、初めて実雇用率が雇用状況報告時点の法定雇用率を上回った。
2024年(令和6年)4月以降の法定雇用率は2.3%から2.5%へ変更されている。さらに2026年7月からは2.7%への改定が予定されている。
・障害種別でみると、身体障害者はこの数年は伸びが鈍化しているが、10年前と比較すると、知的障害者は2倍弱、精神障害者は約6倍とその伸びが近年大きくなっている。近年、特に精神障害者の伸び率が大きい。(P29)
・障害者の法定雇用率の達成割合は、従業員数「1,000人以上」の企業で7割弱、1,000人未満の企業で4~5割程度であり、全体では50.1%で長期的には上昇傾向である。(P31)
前述のように法定雇用率が段階的に引き上げられており、その影響が出る可能性がある。(P31)
・2023年10月末の外国人労働者数は約205万人となり、2007年に外国人雇用状況の届出が義務化されて以降の過去最高を11年連続で更新した。(P32)
・外国人労働者数を在留資格別にみると「身分に基づく在留資格」が最も多く、次いで「専門的・技術的分野の在留資格」「技能実習」が多い。(P32)
・外国人労働者数を国籍別にみると、4年連続でベトナムが最も多く、次いで中国、フィリピンが多いが、中国は減少傾向がみられる。(P32)
第3節 求人・求職の動向
・求人が底堅く推移する中で、求職は微減であったことから、新規求人倍率及び有効求人倍率は僅かに上昇している。(P33)
・2023年の新規求人倍率は年平均で前年差0.03ポイント上昇の2.29倍、有効求人倍率も同0.03ポイント上昇の1.31倍となった。(P34)
近年の完全失業率と有効求人倍率の推移(参考)
・人手不足感は、感染拡大前よりも強まっており、特に「宿泊・飲食サービス」や中小企業において顕著である。(P37)
・企業規模別での人手不足感では、中小企業により強い傾向がみられる。(P37)
・正社員等はパートタイムと比べて人手不足感が強い傾向が長期的に続いている。(P38)
・民間職業紹介事業における常用求人数及び新規求職申込件数は人手不足を背景に増加傾向である。(P39)
・転職者数は2022年から2年連続で増加しており、理由では「より良い条件の仕事を探すため」の前向きな転職が増加している。(P41)
・2024年3月卒の新規学卒者の就職率は、人手不足による売り手市場を背景に、いずれの学校区分においても97%以上の高水準を維持している。(P42)
第4節 失業等の動向
・完全失業率は、経済社会活動が活発化する中で、改善の動きがみられたものの、総じて横ばいである。(P43)
2023年平均の完全失業率は2.6%で前年と同率である。なお、コロナ禍前の2019年は2.4%であった。
近年の完全失業率と有効求人倍率の推移(参考)
・2023年において、完全失業者は「非自発的理由」では減少、「自発的理由」では増加がみられた。(P44)
・2023年においては、長期失業者は「35~44歳」を除く全ての年齢階級で減少している。(P45)
【コラムから】
・障害者の福祉的就労には、雇用契約に基づく就労を行う「就労継続支援A型事業所」と、通常の事業所に雇用され得ることが困難である者が就労を行う「就労継続支援B型事業所」がある。(P49)
・「就労継続支援A型事業所」においては、最低賃金が保障される。(P49)
第3章 労働時間・賃金等の動向
【まとめ】
2023年の労働時間は、総じて前年から横ばいとなり、一般労働者では微増、パートタイム労働者では微減であった。
2023年の賃金について、現金給与総額は所定内給与、特別給与の増加により、3年連続で増加している一方、実質賃金は物価高により減少した。
2023年の賃上げは、比較可能な1999年以降、改定額、改定率ともに最高であった。(P55)
第1節 労働時間・休暇等の動向
・2023年の月間総実労働時間は横ばい圏内、働き方改革の取組の進展等を背景に、長期的には減少傾向である。(P55)
・労働時間は所定内労働時間、所定外労働時間ともに、2018年以降は、減少傾向で推移している。(P56)
・2023年は、所定内労働時間、所定外労働時間はどちらも横ばい圏内で推移しており、2019年よりも低い水準で推移している。(P56)
・パートタイム労働者比率(人数の割合)をみると、長期的に上昇傾向にあり、2023年は過去最高水準の32.2%となった。(P58)
パートタイム労働者比率の上昇の背景には、最低賃金の引上げや主体的に短時間の労働を選ぶなど、働きやすい環境整備により、女性や高齢者の労働参加が進んだことがある。
・長時間労働の状況では、週60時間以上就労雇用者の割合の推移をみると、男女ともに2020年までは低下傾向で推移している一方、2021年以降は横ばい圏内となっている。(P60)
・年次有給休暇の取得率は働き方改革の取組を背景に上昇傾向であり、2023年調査(2022年の状況)では過去最高を更新し、6割を超えた。(P61)
第2節 賃金の動向
・2023年の現金給与総額は、就業形態計、一般労働者、パートタイム労働者のいずれも3年連続で増加した。(P71)
・名目賃金は、2023年は前年から引き続き、24か月連続の増加となったが、物価上昇の影響を受け、実質賃金は年間を通じて減少しており、21か月連続の減少となっている。(P73)
・年齢別所定内給与をみると、若年層では10年前と比べて、いずれの企業規模においても増加している一方で、1,000人以上規模事業所では、中年層の給与の減少がみられる。(P76)
・労働分配率は2021年半ば以降、若干低下している。資本金規模が大きい企業ほど低くなる傾向がある。(P77)
労働分配率は、企業が生み出した付加価値(利益の源泉)のうち、労働者に対してどれだけ支払っているのかを示す指標である。そのため、好況時には利益(分母)が大きくなり、労働分配率は低下する傾向もある。
・労働生産性については、資本金「10億円以上」の企業において大きく伸びているが、資本金「10億円未満」の企業はそれほど伸びていない。
・企業規模が大きいほど、労働生産性の伸びと賃金の伸びにギャップが生じている。(P78)
・産業別に労働分配率についてみると、「医療、福祉業」や「サービス業」といった労働集約的(労働力依存型)な産業ほど高い傾向がある。(P79)
・産業別の労働生産性と賃金の関係では、全産業をみると、一人当たりの労働生産性及び一人当たり賃金は上昇傾向で推移している。(P80)
第3節 春季労使交渉等の動向
・2023年春季労使交渉では賃上げ率は3.60%と、1993年の3.89%に次ぐ30年ぶりの高水準となった。(P83)
・2023年の一人当たり平均賃金の改定額及び改定率の推移では、比較可能な1999年以降で最高値である。(P85)
・2023年の賃上げ実施企業割合をみると、前年に引き続き大きく上昇しており、9割近くに達しており、特に企業規模が大きいほど実施割合が高い。(P85)
・2023年においては、賃上げやベースアップを実施又は実施予定の企業が前年よりも更に増加しているものの、規模の小さい企業は大企業よりも少なく、改定率等においても、大企業よりも小幅となっている。(P86)
・労働組合員数は3年連続で減少、推定組織率(16.3%)は3年連続で低下したものの、パートタイム労働者の労働組合員数、推定組織率(8.4%)ともに過去最高である。(P88)
以上が第Ⅰ部のダイジェストです。
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