新しいキャリアコンサルタント倫理綱領を学ぼう

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※キャリアコンサルタント倫理綱領の二次利用については、キャリアコンサルティング協議会へ申請を完了しています(申請日:2024年1月9日)。

2024年1月に新しい「キャリアコンサルタント倫理綱領」が公表されました。改正前の内容と比べると、より実践的、実務的で、具体的な課題や今後の方向性を想定した内容となっているように感じます。

変更のあった内容などは、後の逐条解説で触れますが、新しい倫理綱領の変更内容の特徴として、主に「社会の変化と新たな課題への対応」と、「組織におけるキャリアコンサルタントの留意点」の二つの視点から見直しがされているようです。

視点1:社会の変化や新しい課題への対応

①キャリアコンサルタントへの期待の高まりと責任の増加
②相談者の多様性(異文化やLGBTなど)への対応力の向上
③社会の変化、特にデジタル化(DX、情報技術)への対応
④キャリアコンサルタント自身の人間的な成長、研鑽

視点2:組織におけるキャリアコンサルタントの留意点

①支援の実施、関係部門との連携の際の守秘義務
②相談者のみならず、組織に対する事前の説明責任
③組織における多重関係の防止

倫理綱領自体のPDFファイルはキャリアコンサルティング協議会のサイトより、ダウンロードできます。お手元に用意したうえで、内容を確認しましょう。

 キャリアコンサルタント倫理綱領

なお、キャリアコンサルタント試験やキャリアコンサルティング技能検定での出題は、2024年度の試験からの出題が予想されます。

それでは、内容を確認しましょう。

序文(一部抜粋)

時代の変化に伴い、新しい働き方の拡大とその実現のため、社会をリードするキャリアコンサルタントへの期待は更に高まり、社会的責任も増しています。多様な相談者や組織からの求めに応えるため、キャリアコンサルタントには、倫理観と専門性の維持向上が必要不可欠です。加えて自らの人間性を磨き、矜持と責任感を持ち、自己研鑽に励むことが何よりも重要です。

2016年の国家資格化から約8年が経過し、キャリアコンサルタントの社会的責任が増しているなか、倫理観と専門性のみならず、人間性や、矜持と責任感を持つことが求められている。

前文(一部抜粋)

本倫理綱領では、キャリアコンサルタントが、職業能力開発促進法に則り、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行い、使命である相談者のキャリア形成の支援と、その延長にある組織や社会の発展への寄与を実現するために、遵守すべき倫理を表明する。

キャリアコンサルティングの定義やキャリアコンサルタントの位置づけは、職業能力開発促進法に法的な根拠がある。

第1章 基本的姿勢・態度

基本的理念

第1条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、人間尊重を基本理念とし、多様性を重んじ、個の尊厳を侵してはならない。

2 キャリアコンサルタントは、相談者を人種・民族・国籍・性別・年齢・宗教・信条・心身の障がい・文化の相違・社会的身分・性的指向・性自認等により差別してはならない。

3 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングが、相談者の人生全般に影響を与えることを自覚し、相談者の利益を第一義として、誠実に責任を果たさなければならない。

多様性の重視や、文化の相違や、性的指向、性自認等への差別の禁止が新たに追加された。

品位および矜持の保持

第2条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタントとしての品位と矜持を保ち、法律や公序良俗に反する行為をしてはならない。

従来の「品位」の保持に「矜持(自分の力を信じる誇り、プライド)」が加わった。

社会的信用の保持

第3条 キャリアコンサルタントは、常に公正な態度をもって職責を果たし、専門職として、相談者、依頼主、他の分野・領域の専門家や関係者及び社会の信頼に応え、信用を保持しなければならない。

以前の3条1項と趣旨は同様である。

社会情勢の変化への対応

第4条 キャリアコンサルタントは、個人及び組織を取り巻く社会・経済・技術・環境の動向や、教育・生活の場にも常に関心を払い、社会の変化や要請に応じ、資格の維持のみならず、専門性の維持向上や深化に努めなければならない。

この内容自体は、以前の第4条(自己研鑽)の2に似た内容が記載されていたが、第4条(社会情勢の変化への対応)として独立、格上げされた。

守秘義務

第5条 キャリアコンサルタントは、業務並びにこれに関連する活動に関して知り得た秘密に対して守秘義務を負う。但し、相談者の身体・生命の危険が察知される場合、又は法律に定めのある場合等は、この限りではない。

2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングにおいて知り得た情報により、組織における能力開発・人材育成・キャリア開発・キャリア形成に関する支援を行う場合は、プライバシーに配慮し、関係部門との連携を図る等、責任をもって適切な対応を行わなければならない。

3 キャリアコンサルタントは、スーパービジョン、事例や研究の公表に際して、相談者の承諾を得て、業務に関して知り得た秘密だけでなく、個人情報及びプライバシー保護に十分配慮し、相談者や関係者が特定される等の不利益が生じることがないように適切な措置をとらなければならない。

2の組織におけるプライバシーの配慮や関係部門との連携、責任の規定は新たに追加された。また、スーパービジョンは初めて明記された。

自己研鑽

第6条 キャリアコンサルタントは、質の高い支援を提供するためには、自身の人間としての成長や不断の自己研鑽が重要であることを自覚し、実務経験による学びに加え、新しい考え方や理論も学び、専門職として求められる態度・知識・スキルのみならず、幅広い学習と研鑽に努めなければならない。

2 キャリアコンサルタントは、情報技術が相談者や依頼主の生活や生き方に大きな影響を与えること及び質の向上に資することを理解し、最新の情報技術の修得に努め、適切に活用しなければならない。

3 キャリアコンサルタントは、経験豊富な指導者やスーパーバイザー等から指導を受ける等、常に資質向上に向けて絶えざる自己研鑽に努めなければならない。

人間としての成長や、情報技術の修得は新たに追加された。

信用失墜及び不名誉行為の禁止

第7条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタント全体の信用を傷つけるような不名誉となる行為をしてはならない。

2 キャリアコンサルタントは、自己の身分や業績を過大に誇示したり、他のキャリアコンサルタントまたは関係する個人・団体を誹謗中傷してはならない。

信用失墜行為の禁止は、新たに追加された。

第2章行動規範

任務の範囲・連携

第8条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、自己の専門性の範囲を自覚し、その範囲を超える業務や自己の能力を超える業務の依頼を引き受けてはならない。

2 キャリアコンサルタントは、訓練を受けた範囲内でアセスメントの各手法を実施しなければならない。

3 キャリアコンサルタントは、相談者の利益と、より質の高いキャリアコンサルティングの実現に向け、他の分野・領域の専門家及び関係者とのネットワーク等を通じた関係を構築し、必要に応じて連携しなければならない。

アセスメント利用の際の留意点は、初めて規定された。

説明責任

第9条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、相談者に対して、キャリアコンサルティングの目的及びその範囲、守秘義務とその範囲、その他必要な事項について、書面や口頭で説明を行い、相談者の同意を得た上で職責を果たさなければならない。

2 キャリアコンサルタントは、組織より依頼を受けてキャリアコンサルティングを行う場合においては、業務の目的及び報告の範囲、相談内容における守秘義務の取扱い、その他必要な事項について契約書に明記する等、組織側と合意を得た上で職責を果たさなければならない。

3 キャリアコンサルタントは、調査・研究を行うにあたり、相談者を始めとした関係者の不利益にならないよう最大限の倫理的配慮をし、その目的・内容・方法等を明らかにした上で行わなければならない。

書面や口頭での説明や、2の組織における説明責任は、新たに追加された。

相談者の自己決定権の尊重

第10条 キャリアコンサルタントは、相談者の自己決定権を尊重し、キャリアコンサルティングを行わなければならない。

以前の第9条と同様である。

相談者との関係

第11条 キャリアコンサルタントは、相談者との間に様々なハラスメントが起こらないように配慮しなければならない。またキャリアコンサルタントは、相談者との間において想定される問題危険性について十分に配慮し、キャリアコンサルティングを行わなければならない。

2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、相談者との多重関係を避けるよう努めなければならない。自らが所属する組織内でキャリアコンサルティングを行う場合においては、相談者と組織に対し、自身の立場を明確にし、相談者の利益を守るために最大限の努力をしなければならない。

2の後段に組織における多重関係発生の防止や相談者の利益を守るための努力が明記された。

組織との関係

第12条 組織と契約関係にあるキャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、相談者に対する支援だけでは解決できない環境の問題や、相談者と組織との利益相反等を発見した場合には、相談者の了解を得て、組織に対し、問題の報告・指摘・改善提案等の調整に努めなければならない。

以前は「相談者の了解のもとに職務の遂行に努めなければならない」としたが、「組織に対し、問題の報告・指摘・改善提案等の調整に努めなければならない。」と、より踏み込んだ内容に変更された。

倫理綱領委員会

第13条 本倫理綱領の制定・改廃の決定や運用に関する諸調整を行うため、キャリアコンサルティング協議会内に倫理綱領委員会をおく。

2 倫理綱領委員会に関する詳細事項は、別途定める。

以上、全13条です。

試験対策のみならず、キャリアコンサルタントの倫理観として、拠り所となるものです。繰り返し確認しましょう。

みん合☆プラス会員の方は、本試験を想定した四肢択一式問題で知識の定着を図りましょう。

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