令和3年版労働経済の分析第Ⅰ部ダイジェスト(1)
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労働経済の分析は、通常は厚生労働省が毎年作成して公表しており、(令和2年版は、コロナ禍の影響で作成せず3年版に統合)、キャリアコンサルタント試験では、第3回~第10回、第12回~第16回と、ほぼ毎回出題されているといってもよい、頻出資料です。同じ回で2問~3問出題されることもあります。
本資料のボリュームは膨大、精読困難です。精読するというよりは、速読のイメージでページを流し読みで良いでしょう。ただし、その場合には、本文前に記載されている、見出しに注目し、その内容で違和感を感じたり、気になったものはじっくり読む方法がおすすめです。
気になる出題傾向は
これまでの労働経済の分析に関する出題傾向は、以下のように分析しています。
完全失業率や有効求人倍率などの雇用指標などのデータがまとめられている第Ⅰ部から、雇用指標や雇用の趨勢に関する出題が1問。
そして、毎回特定のテーマを元にまとめられている第Ⅱ部から、1問出題されるケースが過去に何度かあります。
なお、第Ⅱ部のテーマは毎年異なるため、出題予測は大変困難ですが、第Ⅰ部については、こちらのまとめでも、過去問での出題内容には、過去問回数と解説のリンクを記載していますので、ご活用ください。
何年版が出るのか?
こればかりは、神のみぞ知るところで、過年度に遡って出題されたこともあれば、その年度に公開された最新版が出題されたこともあります。
特に2021年度以降の試験では、コロナ禍の影響を受けた2020年(度)の雇用指標は要注意です。令和3年版労働経済の分析では、2020年の雇用指標や趨勢が全面的に反映された内容になっているため、2021年度以降の試験では要注意と捉えています。
巻末のまとめはコンパクト
なお、とても資料の本編を読む気にならない、という方は、資料のP337~P346のまとめを読みましょう。試験で出題されそうなポイントが凝縮されていると言ってよいでしょう。試験直前までには目を通しましょう。
それでは、こちらのページでは、第Ⅰ部の労働経済の推移と特徴の第1章~第3章から、過去に出題されている項目を中心に、2020年の雇用指標や趨勢を確認します。
画面上部のCheckSheet機能をONにして、赤シートをめくりながら内容を確認していきましょう。
第1章 一般経済の動向
・2020年の実質GDPは、世界的な感染拡大の影響により、リーマンショック期の2009年に次ぐ大幅な減少となった。2009年の実質GDPは前年比-5.7%であったが、2020年は前年比-4.7%となった。(P6)
・企業の業況判断D.I.をみると、2019年には大企業非製造業は高水準を維持していたが、製造業は特に中小企業で大きく悪化し、「悪い」超に転じており、2020年には感染拡大の影響により、「建設」を除く産業で「悪い」超となった。(P10)
・2013年以降、倒産件数は減少傾向にあるのに対し、「休廃業・解散企業」件数は増加傾向にある。なお、2019年の「休廃業・解散企業」件数は前年より減少したが、2020年は増加に転じている。(P18)
・人手不足関連倒産の状況では、2019年も2020年もどちらも「後継者難型」が最も多く大半を占めているが、2019年は前年から減少したものの、2020年は増加している。(P18)[第12回問23]
・2020年の「新型コロナウイルス関連破たん」のうちの倒産件数は、792件であり、主要産業別では「卸売業、小売業」「宿泊・飲食サービス業」で多く発生している。(P19)
第2章 雇用・失業情勢の動向
第1節 雇用・失業情勢の概観
・求人・失業の情勢は長期的に改善傾向であったが、2020年は弱い動きとなった。(P20)
◇2019年と2020年の雇用指標の変化(年平均)
雇用指標 | 2019年 | 2020年 |
有効求人倍率 | 1.60倍 | 1.18倍 |
完全失業率 | 2.4% | 2.8% |
第2節 就業者・雇用者の動向
・労働市場への参加は2019年まで着実に進展したが、2020年には感染拡大により縮小。(P22)
雇用者の就業状態別の動向をみると、労働力人口、就業者数は2013年から増加傾向にあり、2019年にはそれぞれ前年比56万人増、60万人増となった。
しかし、2020年には感染拡大の影響により、就業者数は前年差48万人の減少(8年ぶり)、雇用者数は前年差31万人の減少(11年ぶり)となった※。
※雇用者は雇用されている者、就業者は雇用者と自営業者などを含めたものである。
・2019年までは女性や高齢者等を中心に労働参加が進んだが、2020年には労働力率低下の動きとなった。(P23)
2020年の労働力率は、男女計は前年差0.1ポイント低下し62.0%に。女性は前年差0.1ポイント低下し53.2%となった。また、男性は前年から横ばいの71.4%であった。[第13回問22]
・2019年まで正規・非正規雇用労働者ともに増加傾向であったが、2020年には正規雇用労働者が増加を続けるなかで、非正規雇用労働者が女性を中心に大きく減少している。(P23)
2020年には、感染拡大の影響により、非正規雇用労働者数が前年差75万人の大幅な減少の一方で、正規雇用労働者数は前年差35万人の増加を続けた。正規雇用労働者の増加は6年連続、非正規雇用労働者の減少は11年ぶりである。[第10回問22 第14回問22]
・2014年以降2019年にかけて、男女計では正規雇用労働者の割合は幅広い年齢層で上昇しており、非正規雇用労働者の割合は主に60歳以上の年齢層で上昇してきた。(P24)
・2020年には、男女計では正規雇用労働者の割合は大半の年齢層で上昇しているのに対し、非正規雇用労働者の割合が幅広い年齢層で低下している。(P25)
・感染拡大の影響が見られた2020年においても正規雇用労働者数が増加している背景には、正規雇用への企業の需要が底堅いことが考えられる。(P25)
・過去3年間に離職した者について、「非正規雇用から正規雇用へ転換した者」の人数から「正規雇用から非正規雇用へ転換した者」を差し引いた人数の差は、2013年以降2019年まで年平均でプラスであり、2020年もその傾向は続いている。(P25)[第5回問24 第14回問22]
・2014年から2019年にかけて、不本意非正規雇用労働者は減少し、個人の都合に合わせて非正規雇用を選択する者が増加傾向であったが、2020年には、「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由は、引き続き減少し、個人の都合に合わせて非正規雇用を選択する者もまた減少した。[第14回問22]
・2020年10月末現在の外国人労働者数は約172万人で、2007年の届出義務化以来、過去最多を記録しているが、前年比の増加率(4.0%増)は、2019年(13.6%増)に比べ大幅に低下している。(P29)
在留資格別では、「身分に基づく在留資格※」が最も多く、国籍別では中国を抜いて、ベトナムが最も多い。[第10回問22]
身分に基づく在留資格とは、日本に滞在する目的が就労ではなく、日本人の配偶者や、永住者の配偶者等のように、結婚や長年日本に滞在している場合の在留資格である。
第3節 求人・求職の動向
・2020年の求人は大きく減少し、有効求職者は増加し、求人倍率は大きく低下した。(P32)
・正社員の有効求人倍率は、2019年平均で1.14倍に、2020年平均では3年ぶりに1倍を下回り、0.88倍となった。(P33)[第5回問24]
・パートタイムの有効求人数は、2019年には前年比1.3%減、2020年には前年比22.6%減と大幅に減少している。(P34)[第15回問19]
・新規学卒者の就職率・内定率は上昇傾向にあったが、2021年3月卒は低下した。(P37)
・転職者数は2019年まで増加傾向が続いたが、2020年には大幅に減少した。(P38)
第4節 失業の動向
・完全失業率は2019年までは概ね低下傾向であったが、2020年には幅広い年齢層で上昇した。(P40)
・完全失業率は2019年平均で2.4%、2020年平均で2.8%であった。(P40)[第8回問22]
・2020年には、感染拡大の影響により、男性の「15~24歳」「60~64歳」の年齢層で大幅に上昇したほか、男性の「25~34歳」「35~44歳」の年齢層、女性の「15~24歳」「25~34歳」「60~64歳」の年齢層でも上昇がみられ、若年層と高年齢層での上昇が目立つ。(P41)
・完全失業者は失業理由を問わず2019年まで概ね減少傾向であったが、2020年は非自発的理由による失業者が大きく増加した。(P41)
・長期失業者、一年未満失業者ともに2019年まで減少傾向だったが、2020年に増加した。2020年は長期失業者、1年未満失業者ともに増加したが、1年未満失業者の方が大きく増加している。(P42)
第3章 労働時間・賃金等の動向
・一般労働者の月間総実労働時間は減少傾向にあり、2019年、2020年ともに大きく減少した。(P45)
・パートタイム労働者の月間総実労働時間は減少傾向にあり、月間出勤日数は2019年、2020年と大きく減少した。(P49)
・年次有給休暇の取得率は、2019年調査の52.4%から2020年調査では56.3%と大きく上昇している。(P52)
・年次有給休暇の男女別の取得率では女性の方が男性よりも高いが、男女ともに上昇傾向であり、2020年調査では特に男性の上昇率が比較的大きくなった。(P52)
・年次有給休暇の取得率を企業規模別にみると、全ての企業規模で上昇傾向であり、2020年調査ではすべての企業規模で取得率は50%を超え、特に大企業において取得率が大きく上昇している。(P52)[第10回問24]
・週間就業時間60時間以上雇用者の割合は年々低下しており、2019年も2020年も特に男性の方がその幅が大きい。ただし、2020年の低下には、感染拡大が大きく影響していると考えられる。(P54)[第10回問24 第12回問22]
・賃金の動向では、2019年、2020年ともに名目賃金(物価の変動を考慮しない金額そのもの)は減少した。(P61)
・実質賃金については、2019年、2020年ともに減少した。(P65)
・労働分配率は、2013年以降の景気拡大局面では低下傾向で推移していたが、2019年第Ⅳ四半期から2020年にかけて上昇している。(P67)
なお、労働分配率には、景気拡大局面では低下し、景気後退局面で上昇する傾向がある。
第4章の消費・物価の動向については、雇用や働き方とは直接的な関係が無いためか、これまでに出題がなく、ポイントまとめも省略しています。
第Ⅰ部第5章、第6章や第Ⅱ部については、次のダイジェストをご確認ください。
動画のご案内
厚生労働省では令和3年版労働経済の分析の動画版を公開しています。約30分ほどで、内容を確認することができ、大変コンパクトにまとまっています。
移動時間や隙間時間に、試験までにはぜひご覧ください。
第1章:新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響等
第2章:感染拡大下で業務の継続を求められた労働者の分析
第3章:テレワークを活用して働いた労働者の分析