令和6年版労働経済の分析第2部ダイジェスト

Check Sheet ONOFF

Check Sheet機能をOnにしてご確認ください。 

動画はこちらから(YouTube)

このページでは、毎回テーマが異なる第Ⅱ部の要点をお届けします。今回の第Ⅱ部のテーマは「人手不足への対応」です。時事問題として出題しやすいトピックと捉えていますので、一読して人手不足の現状、過去との比較、今後の課題をインプットしましょう。

なお、出題時期の予想については、第1部ダイジェストをご参照ください。

 令和6年版労働経済の分析

以下のダイジェストは、ボリュームがありますので、章ごと(全2章)に確認するのもおすすめです。

Check Sheet機能をOnにして、隠されている内容を想像しながら確認していきましょう。暗記する必要はありません。違和感のある内容はよく確認しましょう。

第Ⅱ部:人手不足への対応

第1章 人手不足の背景

第1節 これまでの人手不足局面とその背景

・過去半世紀でみると、1970年代前半、1980年代後半~1990年代前半、2010年代以降の3期間で人手不足が生じている

・「有効求人倍率」は、ハローワークで受け付けた「求人数」と求職を申し込んだ「求職者数」の比率であり、1を上回れば、求職者一人に対して一つ以上の仕事の募集がある状態を示している。【P94】

・「完全失業率」とは、労働力人口に占める完全失業者の割合である。【P94】

・完全失業者の失業の要因は、「非自発的な離職」「自発的な離職(自己都合)」「新たに求職」の3つに大別される。【P94】

・1970年代前半の状況については、1950年代から長期にわたる高度経済成長期の末期にあり、景気が急速に上昇したため労働力需要が急増した結果、求人が大幅に増加し、労働力需給は、過去にないひっ迫を示した。【P97】

・1980年代後半~1990年代前半の人手不足は、円高不況を脱した後のバブル景気の時期にあたり、サービス産業化とフルタイム労働力の不足が寄与している。【P98】

・1990年代から急速にパートタイム労働者が増加し、1990年代後半以降はバブル崩壊の影響により、長期的に雇用情勢が悪化し、2002年の完全失業率は調査開始以来過去最高の5.4%を記録した。【P101】

・2010年代以降、経済が回復する中で人手不足が再び生じ、感染症による影響を受ける前の2019 年には、有効求人倍率は1.60倍と、バブル期の最高水準の1.40倍を超えた。また、完全失業率は、2019年に2.4%まで低下した。【P102】

・この30年間で、就業者数は増加しているが、総労働時間は減少している。

・欠員率とは、常用労働者数に対する未充足求人数の割合をいう。

・企業の人員の充足について欠員率をみると、1973年、1990~1991年には5~6%程度まで上昇したものの、2023年には3%弱にとどまっている。【P108】

・2010年代以降現在まで続く人手不足では、欠員率は上昇傾向だが、過去の局面と比較して低く、その伸びも緩やかである。【P109】

・1990年と2023年の企業規模別欠員率では、全ての企業規模において、フルタイム・パートタイムともに1990年の水準を回っており、欠員率をみると、現在よりもバブル期の方が厳しい人手不足の状況であった。【P109】

・有効求人倍率や失業率、雇用人員判断D.I.が示す人手不足感ほど、中小企業における欠員率が高まっていない背景には、企業による定着支援策などにより、短期離職者が減少していることがある。【P110】

・短期離職者とは、入職から1年未満に離職した者を指している。【P110】

・短期離職者が減ったことにより、新たな欠員のリスクは減退したものの、企業規模にかかわらずフルタイム・パートタイム労働者の入職率は低下しており、欠員が埋まる見通しは低下している。【P111】

・2010年代から現在まで続く人手不足は、「短期かつ流動的」であった過去の局面と比べて「長期かつ粘着的」であり、欠員率が示す程度以上に深刻である。【P112】

・求人の充足率とは、新規求人に占める就職件数の割合をいう。

・求人の充足率は、2010年代以降、低下傾向であり、特にフルタイム労働者において大きく低下している。【P112】

・時間当たりの労働生産性は2013~2022年において年平均1.3%上昇しており、同期間の65歳以上の高齢者の労働参加率も20.5~25.6%まで上昇する等、ここ10年間でみても、労働力供給は増加している。【P113】

・高齢化により人手不足が進む可能性がある中、社会全体で労働生産性や労働参加率の上昇に向けた取組を進めていくことが必要である。【P113】

・入職者に占める縁故の割合をみると、1990年には30%程度であったが、ほぼ一貫して低下し、2022年には20%程度となっている。【P121】

・1970年代の地域別の有効求人倍率は、東海で有効求人倍率が5倍にも達していたほか、関東・甲信越、近畿でも2倍を超え、東京、名古屋、大阪といった三大都市圏の人手不足がうかがえる。【P123】

・1990年代の地域別の有効求人倍率は、東海、北陸、関東・甲信越は有効求人倍率が1.5倍を上回っており、中国・四国も同様の水準だが、近畿は1倍前後となった。【P123】

・2010年代の地域別の有効求人倍率は、全ての地域で1~1.5倍となっており、三大都市圏と他の地域との有効求人倍率の差は小さくなり、人手不足が全国的なものとなっている。【P123】

・2010年代以降の人手不足は、製造業や都市部を中心に人手不足が生じた過去の人手不足とは異なり、全産業的にかつ全国的に広がりをもって人手不足が生じている。【P127】

第2節 2010年代以降の人手不足の現状

・ほぼ全ての産業において欠員率が上昇しており、特に中小企業において顕著である。【P127】

・パートタイムの欠員率は企業規模を問わずほぼ全ての産業で上昇している【P128】

・労働力需給ギャップは幅広い産業・職業でマイナス(供給不足)となっている。【P130】

・労働移動については、企業への転職は活発となっている一方で、中小企業への労働移動は横ばい又は低下傾向である。【P131】

・産業間の労働移動は総じて活発化していないが、「製造業」「医療、福祉」を除き、異なる産業からの転職入職率が、同一の産業からの転職入職率を上回っている。【P133】

令和6年版労働経済の分析P133より転載

・フルタイム労働者求人の充足率はバブル期を大きく回っており、2010年代以降において求人と求職のマッチングのしやすさ(マッチング効率性)が低下している可能性がある。【P134】

・マッチング効率性とは、求人と求職がどちらも1%増加した場合に、どれだけ就職が増加するかを示す指標である。この場合に就職が1%増加するのであれば、マッチング効率性は1である。【P134】

・マッチング効率性の低下はハローワークだけではなく、民間職業紹介事業所においてもみられる。【P135】

・マッチング効率性は低下しているが「賞与あり」や「完全週休二日」などの求人の質は改善している。【P136】

・高齢の求職者の低い就職率が、人手不足の中でのマッチング効率性の低下に影響を及ぼしている可能性がある。【P137】

・多様な人材が労働参加する中で、求職者が仕事に求める条件が幅広くなっているなか、男女ともに通勤時間(通いやすさ)や勤務日数(休日、休暇)が大きく増加している。【P138】

・我が国では、欠員率に対する賃金上昇率の感応度が高いことから、欠員率の高まりに応じて、高い賃金上昇率が実現していく可能性があると考えられる。【P139】

・欠員率と賃金上昇率にはの相関関係がみられ、欠員率が高まるほど賃金上昇率も高まる傾向がある。【P143】

第3節 小括(まとめ)

・1970年代前半では急速な経済成長による労働力需要の増大が、1980年代後半~1990年代前半では、サービス産業化の進展とフルタイム労働者の不足が、2010年代以降では、経済の好転やサービス産業化の一層の進展が人手不足に寄与した可能性を指摘した。【P145】

・2010年代の人手不足は、「短期かつ流動的」であった過去の局面と比べて「長期かつ粘着的」である。【P145】

・広範な産業や職業において労働力需給ギャップが生じており、中小企業から大企業への労働移動が生じている可能性がある。また、労働市場のマッチング効率性が低下している。【P145】

・今後の人手不足の深刻化が賃金上昇にプラスの影響を及ぼす可能性がある。【P145】

第2章 人手不足への対応

第1節 誰もが活躍できる社会の実現

・人手不足にあたっては潜在的な労働力の労働参加だけではなく、一人当たりの労働生産性を上昇させることが欠かせない。【P146】

・国際比較では、日本における実質労働生産性の水準は、OECD諸国37か国の中でも中位程度である。【P146】

・生産性向上のため、厚生労働省では、生産性向上に資する設備投資等を行う中小企業への業務改善助成金の給付を行うとともに、人材開発支援助成金や教育訓練給付の拡充などによるリ・スキリング支援を行っている。【P147】【令和6年業務改善助成金のご案内:PDF

・就業希望のない無業者(在学者を除く)は、2022年時点で約3,000万人であり、年齢に限らず総じて女性が多い。【P147】

・就業希望のない無業者は、年齢別にみると、男女合わせて、60~69歳が440万人、70歳以上が2,100万人と大半を占めているが、59歳以下でも350万人ほどとなっている。【P147】

・就業希望のない無業者の就業を希望しない理由としては、「病気・けが・高齢のため」が最も多い。【P147】

・就業希望のない無業者の、59歳以下の女性の約4割に当たる約100万人は、「出産・育児・介護・看護・家事のため」に、無業かつ就業希望なしとなっている。【P147】

・育児や家事、介護の負担が女性に偏っていることが、女性の就労への希望を失わせている可能性が示唆される。【P147】

・男女ともに「仕事をする自信がない」とする者が男女合わせて約70万人おり、地域若者サポートステーションにおける支援や、アウトリーチ型の自立支援等も重要である。【P147】

・就業希望はあるが求職活動を行っていない無業者(約460万人)が求職活動を行っていない理由としては、高年齢者では、「病気・けが・高齢のため」が多いが、59歳以下の女性は「出産・育児・介護・看護のため」が多い。【P149】

・求職期間が1年超に及ぶ長期無業者は約100万人であり、求職者(約320万人)の約3割を占める。【P149】

・求職期間別にみると、59歳以下では、求職期間が1年以上の男性が約3割、女性でも約2割に達している一方で、求職期間が1か月未満の短期の求職者も男性で約3割、女性で約4割を占めており、求職の状況が二極化している可能性がある。【P150】

・長期求職者については、ハローワークでの担当者制などによるきめ細かなマッチング支援をするとともに、雇用保険を受給していない場合等には、求職者支援制度の活用を促す。【P150】

・正規雇用労働者では労働時間を減らしたい者が、非正規雇用労働者は労働時間を増やしたい者が多い。【P151】

・女性の就業率は国際的にも遜色ない水準(79.8%)だが、パート比率については、世界的な低下と対照的に我が国は30%を超える水準にまで上昇し、OECD26か国中5番目に高い国となっている。【P153】

・我が国の女性の正規雇用は年齢が上がるほど比率が下がる。【P154】

・正社員の就業継続率をみると、2000年代では、第1子出産前後の就業継続率は50~60%程度であったが、2015~2019年に第1子を出生した正規雇用の女性では、80%超が出産後も就業継続し、このうち多くが育児休業を取得している。【P154】

令和6年版労働経済の分析P154より転載

・非労働力・失業からの就業の受け皿の中心は依然として非正規雇用であるが、特に若い世代においては、正規雇用での就業可能性が高まっている。【P155】

・この30年において女性の労働参加は顕著に進んだが、パートタイム等の非正規雇用に偏る傾向が依然としてみられ、希望すれば正規雇用として就業できる環境整備が重要である。【P157】

・有期雇用労働者等の正社員転換を促すため、キャリアアップ助成金等を通じた支援を着実に講じていくことも重要である。【P157】【キャリアアップ助成金のご案内:PDF

・65歳以上の高齢者の就業率は、他のOECD諸国と比較すると、我が国は韓国・アイスランドに次いで高い水準にある。【P158】

・高齢者の就業率の推移をみると、1970年代~2000年代までは低下傾向だったが、高年齢者雇用安定法の改正による定年年齢の引上げ等もあり、2000年代後半で反転している。【P158】

・2023年には、60~64歳の就業率は70%を超え、65~69歳の就業率も50%超で、この半世紀で最高水準となった。【P158】

・65歳までの高年齢者雇用確保措置の義務化により、高齢者のいわゆる「就業率の崖」の年齢は60歳から65歳へ上がった。【P159】

・高齢者の体力や身体機能は個人差があり、疾病やけがのリスクだけではなく、若年層に比べて、転倒や墜落・転落などの労働災害のリスクが高く、休業も長期化しやすいことも知られている。【P163】

・我が国で働く外国人の数は、OECD諸国の中では低い水準にあるが、近年大きく増加し、人口に占める割合も上昇している。【P163】

・我が国で就労する外国人数は増加する一方で、送出国である東南アジアの国々との賃金差は縮小傾向にあるため、外国人労働者にとって、我が国の賃金が相対的に見劣りしてしまう可能性がある。【P166】

・我が国の賃金をしっかりと増加させていくことは、外国人労働者に「選ばれる国」であるためにも重要な要素の一つであると考えられる。【P166】

・外国人を雇用する事業所は増加傾向であり、沖縄県では2009~2023年の間に5倍に増加している。【P167】

・外国人の応募を増やす最も大きな要素は賃金であり、年間120日以上の休日日数も応募を増やす可能性がある。【P168】

・外国人が日本で就労するにあたって、最も企業が重要視している能力は、日本語能力である。【P172】

・2024年の法改正により、技能実習制度を発展的に解消し、新たに人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度を創設した。【P174】

・国際的な男女間における労働参加の違いの背景には、出産・育児の負担の在り方等、様々な要因があるものと考えられるが、社会的規範(Social Norms)が影響しているのではないかという指摘がある。【P178】

・我が国においても、女性の就労に関して否定的な考えを夫が持つ場合、妻の労働参加の低下や、労働時間の縮減が生じている可能性が示唆される。【P179】

第2節 介護分野における人手不足の状況と取組の効果

・介護分野は、法人規模・地域を問わず人手不足感が強い傾向にあるが、規模の大きい事業所(100人以上)や都市部において人手不足感が強い。【P188】

・介護サービス事業の運営上の問題点としては、「良質な人材の確保が難しい」を挙げる事業所が約8割で最も多い。【P189】

・全ての地域・法人規模において、介護事業所は長期的に入職率も離職率も低下している。【P191】

・介護分野の人手不足の深刻化の背景は、離職率の低下より速いペースで入職率が低下したことがある。【P192】

・介護分野の人手不足事業所では相対的に賃金が低い事業所がやや多い。【P193】

・介護事業所の人手不足の緩和には、賃金のほか「相談体制の整備」や「ICT機器の整備」、「介護福祉機器の整備」などによる労働環境の改善が重要である。【P194】

第3節 小売・サービス分野における人手不足の状況と取組の効果

・小売・サービス分野においては、半数以上の事業所が「人手不足」を感じている。特に正社員については、多数の事業所が「当面解消する見込みがない」構造的な不足としている。【P200】

・正社員の不足は、入職よりも離職によって差が生じやすいことや、労働者の定着度が高く、離職が少ない事業所は、欠員補充のための新たな募集の必要性もなく、人手不足となりにくいことが示唆される。【P201】

・人手不足の解消に向けては、入職率を上げること以上に、労働者が定着するような環境づくり等を通じて、人材の定着を図ることが重要である。【P202】

・人手不足事業所では、賃金水準・有給休暇取得割合が低く、時間外労働時間が長い傾向がある。【P203】

・小売・サービス事業所でのICTやロボット等への投資は、人手不足へ一定の効果がある。【P204】

・小売・サービス分野では、人手適正・過剰事業所の方が、賃金制度の整備に取り組む所が多い。【P205】

・人手不足事業所では入職率とともに離職率も高く、また労働環境が総じて悪いといった現状もある。【P205】

・着実な賃上げ、時間外労働の減少有給休暇を取得できる職場環境づくりに取り組み、研修や労働環境の整備等を通じて、人材の定着を図ることが重要である。【P205】

第3節 小括(まとめ)

・人口減少により、我が国全体の労働力がひっ迫しているという問題に対しては、生産性の向上に引き続き取り組んでいくとともに、女性、高齢者、外国人の多様な労働参加を促す。【P214】

・女性については、就業率からみた労働の「」は国際的にも遜色ない水準となっているが、非正規雇用における就業が多く、正規雇用転換等を通じた「」の改善に取り組むことが重要である。【P214】

・高齢者については、国際的にみても就業が進んでいるものの、依然として65歳を境に「就業率の崖」が生じている状況にあり、希望に応じて65歳を超えて就業できる環境整備が重要である。【P214】

・外国人労働者については、日本で働く外国人や外国人を受け入れる事業所は大きく増加しているものの、送出国との賃金差が縮まる中で賃上げ等に引き続き取り組み、日本が「選ばれる国」になることが重要である。【P214】

・女性、高齢者、外国人、障害のある人など、様々なバックグラウンドを持った人材が同じ職場で働けるようにすることにより、会社の持続的な成長・発展につながるような新たな付加価値を生む可能性もある。【P214】

・介護分野や小売・サービス分野等の人手不足が深刻な分野において、その人手不足の背景等も踏まえながら、人材確保の取組を支援していくことが重要である。【P214】

ダイジェストは以上です。

出典資料の「まとめ」において、コンパクトな文章(全3ページ)で内容を確認できます。

 令和6年版労働経済の分析(P217~P219)

厚生労働省の動画のご案内

厚生労働省では令和6年版労働経済の分析の動画版を公開しています。約13分ほどで内容を確認でき、おすすめです。